第16.5章  2006/02/08(水) 01:08:37 ID:kyz+HUaZ


昼休み。
フェンスを背に、宏海は屋上で黙々と焼きそばパンを頬張っていた。
陽光は暖かく降り注ぐものの、背中に当たる風は幾分冷たさを増してきている。
(そろそろここで昼飯食うのも辛くなってきたな……)
ふと思いながら片手で缶コーヒーのプルタブを開け、口を付けた。
その宏海の隣で、
「むふ。うぷぷ…。ぐふふふふふふ……」
締まりない笑いを太臓が繰り返す。
「なんだ? 気味悪ぃな、さっきから」
モグモグと口を動かしながら、宏海が問い掛けた。
「ふふふ。だってさ〜、聞いた? 昨日のアレ」
「昨日って、佐渡んちに行った時の事か?」
「そう、それ!! あいすの奴、ばあちゃんに俺の事しょっちゅう話してんだぜ! しょっちゅう!
そぉかぁ……いつもあいすの頭の中は俺への想いでイッパイだったなんて。俺って罪なオ・ト・コ」
でへでへと緩んだ顔のまま、コンビニおにぎりにかぶりつく。
一瞬、宏海の頭に“共食い”という単語が浮かんだ。
「話してるって……全部お前のやらかした騒ぎの愚痴じゃねぇか」
「フフフ、きっとアレだね。普段の冷たい仕打ちも俺への愛情の裏返し! 本当は毎晩俺を思って…」
宏海のツッコミも既に耳に届かず、太臓は妄想世界に突入する。



【太臓の妄想】

「ん……ふぁ……」
夜。布団の中で熱い少女の喘ぎが漏れる。
あいすの白い左手が、ささやかな胸の膨らみをパジャマの上から撫で回し、右手はパンツの中に潜って
大事な部分をクチュクチュと掻き回していた。
「んあ……太臓…………太臓ぉ……」
恋しい少年の名前を呼びながら、布越しに分かるほどツンと立った乳首を指で転がす。
「太臓……いつも酷いコトしてごめんね……。でも……ン…太臓が、他の女の子と仲良くなるの……
…………見てられないのぉ……」
我慢できなくなった指が、ボタンを外して胸元に滑り込む。白い膨らみの先端、肌よりほんの少しだけ
赤みの差した突起を、二本の指でそっと、何度も扱き立てる。
「ふあぁ……。吸われてる……太臓に…おっぱい吸われてるぅ……」
指の動きを舌に見立て、少年に抱かれる自分を夢想する。それだけで少女の全身に快楽の波が押し寄せ
じゅん、と淫らな液が奥から溢れてくる。
ぬるぬるの穴を右手の中指がせわしなく出入りし、零れた蜜が秘唇や指を伝って下着を濡らした。
「ん、ふぅ…………ふぅ…………」
全身を火照らせ、いけない指遊びに没頭していたあいすが、それまで閉じていた目を見開いた。
枕元の写真立てには無邪気に微笑む少年の姿。
「あっ!! 太臓ーーーーーーッ!!」
膣がギュッ、と中指を締め付け、びくん、びくん、と身体が痙攣する。少年の名前を呼びながら、
あいすは絶頂へと上り詰めた。
「はぁ……はぁ……」
荒い呼吸を落ち着け、あいすは右手を目の前にかざす。いやらしい液に濡れた、自分の指。
「私が、ホントはこんなエッチな子だって知られたら……太臓に嫌われちゃう……」
くすん。あいすの頬を、一筋の涙が伝った。

 * * *




「なんてなーーー! なんてなーーー!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴ………………ロゴロゴロゴロゴロゴロゴローーーーーーーーーーーッ
屋上のコンクリの上を、向こうのフェンスまで転がってまた戻る。妄想暴走機関車絶好調。
「たったあれだけの出来事で、そこまで妄想できるのがトンデモねぇな」
焼きそばパンの最後の一口をコーヒーで流し込み、宏海はコロッケパンの封を切った。
「幸せ気分に水を差すようで悪ぃが、過度な妄想はいらん不幸を招くことになるぞ」
「そうですよ王子。宏海の言う通りです」
それまで黙って照り焼きサンドをパクついていた悠が、会話に加わってきた。
「いいですか、王子。あいすは王子や私だけでなく、宏海の事も話しているんです。ここ重要ですよ」
「え? なんで?」
頭の上にでっかいクエスチョンマークを浮かべている太臓の肩に手を置いて、悠がその目を覗き込む。
「間界領事という立場上、あいすが王子の事を話題にするのは、ある意味当然です。それに対して
宏海は実界人。つまり、あいすは職務と関係ない部分で宏海の事を思い悩んでいる可能性が高い……」
「そ、それって一体……?」
ぐびび、と唾を飲み込む太臓に、悠が重々しく口を開いた。
「十中八九、セクハラですね。それも悪質な」
「勝手にヒトの悪行捏造してんじゃネェ!!」
コロッケパンを握り締めて宏海が怒鳴る。
「そ、そんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
宏海のツッコミは完全にスルーされ、太臓は独り衝撃に青ざめている。
「ま、まさか俺のあいすが……。いや、宏海の奴は結構ムッツリスケベっぽいし、もしかして……」




【太臓の妄想:2】

ガタ、ガターン!
乾いた音を立てて椅子が倒れる。
「や、やめなさい! やめて!!」
ひと気のない教室。机の上に押し倒され、あいすは必死に男の腕から逃れようともがく。
「へへ……。腕力で俺にかなう訳ないだろ」
下卑た笑いを浮かべ、“赤い悪魔”と恐れられる不良、阿久津宏海が覆い被さってきた。
片手であいすの腕を押さえ、もう片方の手がぐい、と少女の顎を掴み、煙草臭い息が近付く。
「ん!? ンンンーーーーーッ!!」
強引に唇を奪われて、あいすがくぐもった悲鳴を上げた。粘つく唾液と一緒に舌が割り込んでくる。
「ンンッ! ンンーーーッ!」
ずるり、と男の舌が少女の舌に絡み付く。一方的に少女の舌を吸い上げ、嬲る。
「うぇっ!……けほ、けほ…………」
一分近く口の中を蹂躙され、解放されると同時にあいすが咽ぶ。その隙に、男の手が制服の上から
胸に触ってきた。
「この、調子にのると……」
あいすが自由になる方の腕を振りかざすと、その掌に白い冷気が集まる。
「おぉっと、変な力は使わないほうがいいぜぇ」
くっくっ、とおかしそうに宏海が顎をしゃくってみせた。
「!?」
顎で指し示された場所に視線をやって、あいすが息を呑む。いつの間に仕掛けられていたのか、そこに
デジカメがセットされ、自分たちを撮リ続けていた。
「もしもお前が雪人の力を使えば、そのシーンを世間にばら撒いてやるから、そのつもりでな」
「そんな……嫌ァ!!」
制服が皺になるのも構わず乱暴に胸を揉まれ、あいすが悲鳴を上げる。
「あ、あんたこそ、女子に暴行してる証拠映像になるのよ! 分かってるの!?」
「なんせ元々不良なんでな。……俺とオマエ、どっちが失うものが大きいか、分かるよなぁ」
「く……卑怯者!」
「なんとでも言え。あひゃーーーひゃひゃひゃ!!」


目を血走らせ、角を生やした宏海(注:イメージ映像)が、ブラウスを引き裂いた。ほんのりと羞恥に
紅潮した肌を武骨な指が這う。
「んん〜〜? 随分と可愛いブラしてるじゃねぇか」
いちご模様の下着をずり上げると、白い乳房と薄桃色の乳輪が露わになった。乳輪の中央には、小粒の
乳首がひっそりと隠れている。
「ひぅっ!? い、痛い!」
いきなり乳房に吸い付かれ、あいすが悲鳴を上げた。宏海は遠慮なく陥没していた乳首を吸い上げ、
無理矢理引き出された突起をレロレロと舐めまわす。
(うぅ……。悔しい……こんな変態で好色で不細工な不良にいいようにされて……
こんなことなら意地を張らずに太臓に告白すれば良かった……)
あいすの瞳から涙が零れ、小さな嗚咽が乳房を吸う音に重なり合う。が、その泣き声に微妙な変化が
現れ始めた。
「うぁ…………ん……ふぁ……」
すすり泣きの涙声に混じる甘い吐息。
「……あ……ど、どうして?……」
執拗に弄ばれ固く充血した乳首は、痛みを痺れに変える。ぷっくり膨らんでジンジンと疼く二つの
突起が舐め転がされる度に、あいすの下腹部に淫らな疼きが伝播する。そろそろと伸びた男の手が、
あいすのスカートに潜り込んで柔らかな太腿を撫で始めた。
「くぅん! や! やだぁ」
びくん、と反応しながらも懸命に男を拒む少女。
太腿をイヤラシねちっこく触っていた手がスカートをたくし上げ、下着を引き毟った。
「ひっ!? イヤァーーーーーッ!!」
なにか固いものがアソコに当たってる。
「駄目、それだけは許して。初めては……初めては太臓に、って……」
「なんだ、お前バージンかよ。ひゃひゃひゃ、こいつはラッキー!」
「止めてェ!! 痛ァーーーーーーーーーーッ!!!!」
愛撫も何もない挿入。身を引き裂かれそうな激痛に、あいすは悲鳴を上げる。
「へへ。初モンゲットだぜ」
滑りの悪い膣の中へ無理矢理ペニスをねじ込み、悪魔が笑った。
「うっ……ぐすっ………ゴメン…ごめんね太臓……」
純潔を散らされ、冷徹な仮面を剥ぎ取られて、少女はただ泣き続ける。
「おっと、これで終わりだなんて思うなよ。お楽しみはここからなんだからな」
三流エロビデオのレイプ魔みたいな台詞を吐いて、宏海が腰を動かし始める。
黒板の横に飾られていた椿の花が、ポトリと落ちた。

 * * *






「うわーーん! 宏海ぃ〜〜〜〜! あいすの処女返せーーーー!!」
「んなもん返せるかーーーーーー!!」
泣きながらすがりつく太臓を宏海が振りほどく。
「……ったく。妄想するのは勝手だがよ、人を巻き込むな」
乱れた襟を直し、うっかり握り潰してしまったコロッケパンを慎重に口へ運ぼうとしたところへ、
「阿久津ーーッ!! やっぱり貴様が元凶か〜〜〜〜!?」
「あんたもかい……」
どこから現れたのか、3年の真白木が泣きながら宏海に掴みかかってきた。
「ううううう! あんな可愛くて清楚な子が、こんな鬼畜の毒牙にかかるなんて……」
「待て。太臓の世迷言を本気にするな」
「はっ、そうか。今まであの子が俺に冷たくしていたのも、もしかして全てこいつに脅されて……」
「その通りです。貴方の知らないところで、あんなコトとかそんなコトとかそりゃもうイロエロと…」
またも悠が火に油を注いだ。
「い、い、イロエロだとおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜ッッ!!!?」





【真白木の妄想】

 ずぷちゅっ。ずぷっ。ぷちゅっ。
「あ、はっ。……んっ……くふぅ……」
「へへ……お前のココも、随分と俺のチンポに馴染んできたじゃねぇか」
ロストバージンのレイプ映像で脅され、呼び出された3階の視聴覚室。
窓に両手をついて、あいすは立ったまま後ろから犯されていた。
「うぅ…………は、早く、終わって……外から、見えちゃう…」
今にも崩れそうに震える膝を懸命にこらえ、少女は男の欲望に耐える。
「くっくっく。ソイツも面白いな。“氷の微少女”が男とヤッてたなんて知れたら、あっという間に
学園中の噂だぜ」
「そ、そんなの嫌ァ!」
「なら少しでも早く俺をイカせてみろよ。オラ! もっと腰使え!」
言われるままに、仕方なく少女は腰を前後させ始めた。
「へへ、いいねぇ。自分から身体くねらせてケツ振って……なかなかエロイぜぇ、あいす」
「くっ……!!」
悔しさに歯噛みしながら、それでも腰の動きは止められない。
キシキシと窓枠を鳴らしながら、下衆な悪魔を満足させるために奉仕し続ける。
恥ずかしさに閉じていた目をふと開き、そこであいすは驚愕に息を呑んだ。
「真白木先輩!? どうしてこんな時に!」
窓から見下ろす中庭に、密かに想いを寄せている男の姿。
「ん? 何だ? 下に真白木の奴が居るのかよ。うひゃひゃひゃ、こいつはイイや!」
宏海が背後から乱暴に犯し始める。膣の奥を叩かれる程の激しい突き上げに、あいすの上体が窓に
押し付けられた。
「嫌ァ! お願い、止めて! 気付かれちゃう!! 先輩に見られちゃうぅ!!!」
あいすの必死の哀願に、宏海はただ嘲笑うだけだ。窓の軋む音が更に大きくなる。
その音に気付いたのか、真白木が顔を上げた。
「!!」
視線が絡み合う。あいすの姿をみとめ、真白木が爽やかな笑顔を浮かべた。角度的に後ろの宏海までは
見えていないらしい。それでも、好きな男の前で醜悪かつ残忍な屑に犯されているのは事実なのだ。
(ああ、先輩。そんな無垢な瞳で私を見ないで……)
耐え切れず顔を背ける。
「おいおい、知らん顔してやるなよ。憧れの先輩に手ぐらい振ってやれや。もしも奴が不審に思って
踏み込まれたら困るのはお前だろう。あぁ?」
ぴしゃり、と尻を叩かれて、今にも涙の零れそうな顔に笑顔を装い、少女は眼下の想い人に小さく
片手を振ってみせる。応えるように真白木も手を振った。
「うぅっ、そろそろ出すぜ……」
びゅるっ。びゅっ。びゅくっ。
(やだっ!! 中に!? 嫌っ!! 私、先輩の前で汚されちゃった!!)
体内に広がるおぞましい温もりに気が狂いそうになりながら、それでも少女は笑顔を守る。
暫くして真白木の取り巻きの一人が彼の傍に駆け寄ってきた。何事か告げて彼を引っ張っていく。
名残惜しそうに何度か振り向きながら、やがて彼の姿はあいすの視界から消えた。
真白木が去るのと同時に、あいすがその場に泣き崩れる。
「……ぐす……ひっく……。もう嫌……こんなの、嫌だよぉ」
「メソメソ泣いてんじゃねぇよ! おら、俺のチンポきれいに掃除しやがれ!!」
髪を掴んで無理矢理引き起こされた顔に、青臭いペニスが押し付けられた。
「うぐ……ん…………」
2人きりの視聴覚室。赤黒い肉茎を舐めしゃぶる少女の舌が、小さな水音を立て続けていた。


 * * *





「オロロ〜〜〜〜〜ン!!! 宏海のアホーーーーーッ!!!!」
「阿久津〜〜〜〜〜ッ!!! てめぇの血は何味だァーーーー!!!!」
勃起したまま悔しさに号泣する2人の男。
「つーか、なんで興奮してんだお前ら」
食事を続ける機会を完全に逸して、宏海は妙なテンションで泣き喚く太臓と真白木を呆然と眺める。
「もうその辺にしとけって。もしこんな所を佐渡の奴に見られたら…」
「見られたら、どうだというの?」

澄んだ声に、文字通り空気が凍り付く。
宏海が恐る恐る声の聞こえた方向へ顔を向ければ、そこに立っていたのは無表情のまま腕組みをした
ショートヘアの小柄な美少女。
「……よ、よう佐渡! もう昼飯は終わったのか? まだなら一緒に……」
「あんた達、昼間っから随分と不謹慎な話題で盛り上がってるじゃない。それも学校で」
何とか場をごまかそうとした宏海の言葉を跳ね除け、少女が眉間に皺を寄せる。ツララのような冷たい
視線に射抜かれ、赤い悪魔の背筋を冷や汗が伝った。
「ま、待て! 落ち着け! ここには真白木さんだって居るんだぞ。下手に能力なんぞ使ったら……」
言いながら振り向くと、既に真白木は氷漬けにされて固まっていた。そして悠の姿も当然ながら
消えている。
(あんにゃろう! 逃げる前に一言掛けやがれ!!)
「うおおおぉーーーーん!! あいすぅ〜〜〜!! せめてお尻の処女は俺にくれぇ〜〜〜〜!!!」

ビキィッ!!

未だ妄想と現実の区別がつかない太臓の叫びに、あいすの自制心がひび割れて爆ぜた。
床から生えた無数の氷の刃が少女の左右に列を成し、宏海たちを取り囲む。
「(あんた達の命が)散れ…」
「ぎゃぁあぁーーっ!! せめて殲景にしてぇぇーーー!!!!」
「だから、なんで俺までぇぇぇーーーーーー!!!!」

「お、今日は特に派手だなぁ」
トマトジュースのストローパックを吸いながら、悠は屋上に湧き上がる雪煙と血飛沫を見上げた。

(おわり)





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