*プロローグ*

投稿日:2008/05/13(火) 08:30:28 ID:ibvhNaKM


 5月3日。

 世間ではゴールデンウィークと呼ばれ、学生や一部社会人が浮かれる影に、
阿久津宏海はこの世に生を受けた。
 彼の誕生日というものは、他人から忘れられやすい物であり、故に他人からまともに祝って貰ったと記憶するのも、
18年の人生の中でわずか数度ほどしか無いという有様であった。
 祝日に誕生日のある人間の受けるお約束と言えよう。

「…で、それと今の状況と、…何の関係があるんだ?」
 自分の部屋の、半ば万年床と化した布団の中で蠢く存在に向け、宏海は息も切れ切れに尋ねた。
 念の為に言っておくが、今の状況に納得しているわけではない。
 納得など出来る筈も無いだろう。
「ん…だから、『今日一日、赤毛が満足できる状況をつくる魔法をかけてくれ』って悠様から頼まれて…んちゅっ、
感謝しなさいよ? ハーレムなんてアンタには……はっ、この先、絶対巡ってこないシチュエーションだろうから」
 宏海の問いに答え、布団の中の存在が身を起こす。同時に熱気のこもった上掛け布団がめくれ、
中からは目にも鮮やかな緑色の髪をした少女――翠が現れた。
 全裸で。
 そして、のし掛かられて荒い息をこぼす自分もまた、全裸だった。
更に付け加えれば、あと数センチで『レッツ・コンバイン!』状態だった。

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ、出来るかっ!」

 つっこみ気質の宏海からすれば、突っ込みたいことはもっと山ほどあるはずだった。
 だが寝起きドッキリに近い現状が、マトモな思考能力を奪っていたのだ。
「…言っとくけど不本意、なんだからね……でもこの魔法のせいで今、魔力切れなのよ。
だから解除もできないの。F○だってディ○ペ○唱えるにはMPが必要でしょ」…微妙な例だ。
 と言いつつも、舌なめずりをしながら宏海にまたがる翠の頬は上気しており、
目はこれから起きる事態に対しての期待で輝いているようにも見えた。

 対する宏海はというと、抗わなければならないと、頭では理解していたのに、指一本動かせないでいた。
 魔法の力ではなく、悲しい男の性というやつである。
 ぶっちゃけて言えば、勃っていたのだ。ナニが。

「…朝勃ちを襲うのは反則だぞテメエ…」
『それ以前にこういう魔法があるなら、どうして太臓に使わなかったタマか?』
「使わないじゃなくて使えないの。これは星回りとか縁とかが大いに干渉しあって初めて成立するんだから…つまり、
元から誕生日が存在しない間界人には通用しな……あー、精子黙ってて! 気が逸れちゃうじゃない!
…いくわよ、赤毛」
 冷静なツッコミをかます使い魔を制し、翠の腰がゆっくりと沈み込んでいく。

「あっ…やんっ、太い……」
「く…熱っ…」
 ねっとりと絡みつく柔肉の感触が、根元まで飲み込んでいく。
 何とかギリギリで、童貞喪失は先に済ませていた宏海だが、幾重にも纏わりつくぬるついた媚肉で己をしごかれる、
という自慰ではけっして味わえない世界は、何度経験しても慣れることはない。
「ふぁっ、あっ、け、結構いいモノ持ってんじゃない…すご、当って、る」
 そういう翠の中も、それなりに経験があるのか、緩急入り混じった締め付けと、
繋がりが抜けそうな位腰を引いては叩きつけるストロークと、うねりあげるような蠕動をもってして、陰茎を責め立てる。
 ただでさえ寝起きで刺激に慣れない内に、この仕打ちはかなり厳しい。

「あんっ! あっ、あ、これっ、いいっ! こす、れてゴリゴリするのぉっ!」
「不本意な割に、のっ、ノリノリじゃねーかオマエ」
 黙ったままだと搾り尽くされかねないので、誤魔化すように声を掛ける。
「あ、アンタらって何よコレ…! こんな…ろ…反則…っ!」

 翠のろれつが回らなくなっている。随分感極まってきているらしい。
 宏海の方も、さっきから股座をじりじりと灼く痛みに似た快感に、そろそろ限界を感じていた。
 胸板に手を掛け、腰を振るたびに噴き出す蜜が、互いの体と布団を濡らしていく。
「は、んっ!やああ、あん!」 
 時折がくり、と身を崩しそうになる翠の、丸みを帯びた腰を掴むと、
宏海はラストスパートと言わんばかりに最奥へと肉杭を打ち込んだ。

「頼むから…失神のひとつでもしてくれよ…っ!」
「ああっ、ひゃめっ! ヘン、ヘンになっちゃ…ううぅっ!」


 アパートの外に出れば、5月の日差しがやたらと目に眩しかった。

「クソっ…ハーレムだと? ふざけんじゃねえぞ」

 十数分前、絶頂に至ったまま気を失った翠に代わり、精子に今の自分に掛けられたという、
ふざけた魔法について聞いてみた宏海は――やはりふざけているとしか言いようの無い内容に頭を抱えた。

 曰く、自分に何かしら『縁』のある異性(同性では色々都合が悪いとの事。その辺は同意する)が、
元々自分に対して抱いていた好意的な感情を増幅させ、発露させる作用を持つ――つまり、翠の場合だと、
悠ほどで無いにしても、それなりに持っていたと思われる好意的な感情を更に暴走させた――となる訳だ。

『翠たまの場合、好意が行為に化けてしまうのも納得できるタマけどね…』
「誰がうまいこと言えと言った」
『まあ、翠たまの言葉を借りれば、今日一日だけの話タマ。
出来るだけ身近な異性に関わるのを避ければなんとかなると思うタマよ?』
「…本当だな?」
『でも、家にいるのはマズいタマ。……そろそろ翠たま、目を覚ましそうタマ』

 精子の言葉に背筋が引きつる。さすがに底なし性欲の翠の相手は懲り懲りだ。
 そんな経緯で、宏海は手早く着替えると、逃げ出すようにアパートを後にしたのだった。
「はあ、これからどうするかな…身近な異性に会うなって事は、人気の無い所行けばいいのか?」
 溜息を吐き、これからの身の振りように思いを巡らせる。


*選択肢*

『学校へ行く→A』
『市外へ行く→B』

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