悠×あいす【遊びをせんとや生まれけん】  2006/03/05(日) 01:55:52 ID:g4maMyA0


熱い。
収まらない熱が体中を駆け巡っていて息苦しいほどだ。
今日は科学室を使用するクラスはないとはいえ、もしかしたらということはある。悔しいが
悠の言葉に従うしかないあいすは、薄暗く狭い準備室に篭もったままどうすることも出来
ずに、ただ時が過ぎるのを待つばかりだった。
淫らなまでに体に溜まっていく熱で、気が狂いそうだ。
さすがは執拗で残忍なナーガ族の秘薬だ、と感心するばかりだ。これほどダイレクトで的
確に性感を刺激されたら、恐らくはどれほど強靭な精神を持った者でもあっさりと陥落する
だろう。

六時間目の授業終了を知らせるチャイムが高らかに鳴った。
「あー、終わった終わった」
授業の間はつまらなそうな顔をしてこくりこくりと舟を漕いでいたりもしたのに、終わった途
端に太臓は生き返ったように元気溌剌で伸びをした。
「じゃあ、帰ろうぜ。悠」
カバンを掴んで、さっさと教室を出ようとしている太臓の腕をがっちりと悠はキャッチした。
「お待ち下さい、王子」

熱い、苦しい。
「…っ」
心臓が激しく打ち鳴らされて、このまま死んでしまいそうだった。
一体どれだけの時が過ぎたのだろう。狭い準備室の中には時間を確認出来るものなど何
もない。風船がどんどん膨らんでいくように、淫らな熱が体中を満たしていく。これはまるで
悪い夢だ。どうしてこんな風に掻き乱されているのだろう。
もう、何も考えられなかった。
もし、悠が気紛れを起こして、あるいはすっかり忘れてしまって帰ったりしたら、きっと自分
は狂うに違いない。それだけは確実だった。



狭い準備室の中にまで、熱は放出されている。暖房もないのに肌がじっとりと汗ばんでい
た。壁にもたれて蹲っているだけなのに、狂おしいほどに熱い。
「ぁ…んうっ…」
半端に乱されたままの制服が窮屈に感じるほどだ。体中どこを触っても感じてしまうほどに
じんじんと疼いている。
「はぁんっ…」
無意識の声が漏れた。長いこと放り出されたせいで、意識さえもが既に正気とは言えなく
なっている。もうたまらなくなって、そろそろと指先をぐっしょりと濡れそぼっているショーツ
に押し当てた。
「あぁんんっ…」
ゾクゾクするほど気持ちがいい。布越しとはいえ、触れているだけで何もかもが飛びそうな
感覚があった。もう我慢出来ない。
遠慮のなくなった指がショーツの中に侵入して、思う存分に疼くそこを掻き回す。すっかり
快感に支配されきっているあいすは、もう正気など完全に飛んでいた。
「あ、あん、あぁはんっ…」
「あいす」
夢中で自慰に耽っている最中に、突然少年の声が上から降る。
「…何だ、一人でお楽しみだったか。待たせたようだな」
底意地の悪いことを言いながら準備室に入ってくる足音が苛立ちの芯を踏みにじる。これ
ほど翻弄しておいて、どうして涼しい顔が出来るのか本当に腹が立つ。自分のしていたこ
とを見られたことには、今更だからと特別何も感じなくなっていた。
「当たり前よ。あんたのせいで授業に出られなかったじゃない」
「お堅い優等生がどうしたことだと噂になっていたぞ。まあ、俺の知ったことではないが」
あいすをこんな風にした当事者でありながら、あくまでも無関心を装う悠の手がするりと頬
を撫でた。
「約束だ。遊んでやろう」
これからまた、散々に蹂躙されるに決まっている。だが、いつ来るとも知れないまま疼く体
で放り出されるよりは遥かにましだった。



「あのバカは」
「何だ、いきなり」
「もう放課後なんでしょ。一緒にいないとまずいんじゃないの?」
「そんなことか」
もう着ているとは言えなくなっていた制服を脱がせる手を一度たりとも止めることなく、悠は
言葉を返す。
「王子は今頃数学の補習中だ。さすがに俺一人が帰る訳にはいかないだろう。そんなこと
もあって宏海は先に帰した」
「は、そう。なるほどね」
こんな時間に悠がいる理由が、ようやくあいすにも合点がいった。最初から分かっていたか
らこそ今日の暇潰しにとあいすを捕らえたのだろう。ただ、それだけのことだ。別に何かを期
待した訳でもないが、悠らしいとは思った。
剥き出しの火照った背中に、冷たいリノリウムの床が気持ちいい。

「はん…あぁああんっ…!」
突き上げられる衝撃が、体中の性感を一気に覚醒させていった。
放っておかれた間にすっかり蕩けきっている体だからこそ、悠はズボンのファスナーを開け
てすぐに襲いかかってきた。何もしなくても濡れて男を待ち受ける女の部分が、言葉などな
くてもあからさまに誘っているからだ。その感覚が自分でも嫌というほど分かるからこそ、あ
いすは目を閉じて耐えるしかなかった。
「いい反応だな」
「あぁぁんっ…い、いやよっ…」
「雪人の女は普段お高く留まっている分、性的な刺激には極端に弱くて攻めれば陥落しや
すいと聞いた。お前もやっぱりそうだったな…」
激しく突いてきながら冷めた声でそう呟く悠が、熱を帯びたあいすの耳を甘く噛んでは舌で
ねっとりと攻めてくる。
「ひゃぁんっ…」
「そういう女を手に入れたいと思うのは、当然だろう」
「あ、は…何言って、るの…?」
「お前は、それにはまった。ただそれだけだ」



熱い。何もかもが止まらない。
力の抜け切った体が四つん這いにされた。腰だけがしっかりと固定されていて、相変わら
ず灼熱と化した棒杭を穿たれている。頭の芯がじんわりと痺れるほどの快楽があいすを支
配しきっていて、もう従順な奴隷そのものだった。
突き上げられる度に、髪が振り乱される。
「あぁ…あん、ダメ、もうダメなのっ…」
たらたらと繋がった部分からは絶えず蜜が腿を伝って滴り落ちていた。膝の辺りで透明な
溜まりを作っている。それを見たのだろう、悠は桜色に染まった小振りの乳房を揉みながら
も満足そうに囁いた。
「そうか。その割にはいい反応だぞ。こんな風にな」
唐突に、痺れるほど感じている淫核を強く擦られた。
「ああああっ!!」
凄まじい快感に、背筋に電流が走った。もう何もかも振り切って、あいすは悶え狂うしか残
されてはいなかった。
「あはああ!!ダメ、ダメよっ…」
「…見込んだ通りだ。お前はやっぱり面白い」
ぞくりとするほど静かな声が、不思議と浸透していった。

結局、何度犯されたか分からなかった。
全てが終わった頃、解毒と称する薬を飲まされてようやくあれほど狂おしく駆け巡っていた
熱が綺麗に引いていく。
無表情なまま、この少年は蛇の嫌らしい特性を剥き出しにして好き放題にあいすを陵辱した
のだ。いや、そもそも最初から嫌だったら誘いに乗らなかった筈だから、決して今日のことは
一方的なものではないことはあいすにも分かっている。
分かっていても納得は出来そうにない。
「ねえ」
「何だ」
何もなかったように制服を着込んでしまうと、あいすは普段の冷たい表情に戻った。先に準
備室を出ようとしている悠の背中に言葉を投げる。
「私が雪人の女だから、こうしたの?」



「当たり前のことを言う」
ただそれだけの興味で、それ以外には何もない。そう言いたげな返事だった。悠はそのま
ま一切の躊躇もなく、振り返りもせずに立ち去ってしまった。
「…ふーん」
すっかり乱れてしまった髪を手櫛で整えながら、あいすは少年が消えたドアの外を眺めて
いた。そろそろ日が暮れようとしている。
こんな風に扱われたことには何の感慨もない。自分の不覚からきたことだし、引き摺るのも
らしくない気がしたのだ。
今日は見事にしてやられたけれど。
「次があれば、きっと反撃するわよ」
噛み締めるように呟く声は、低く響いていた。その癖、新しい遊びを見つけた子供のように
あいすの表情は柔らかくほころんでいた。





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