融合宏海矢射子:2007/04/10(火) 00:49:33 ID:iL+bCxdP



休日の夕暮れ時、亜久津家の風呂場にタオルを巻き付け立っている一つの人影があった。

「み…見ないようにしてね」
「ああ…わ、わかってる」
二人分の声を出すその人影の首から上は‘赤い悪魔’と呼ばれている阿久津宏海だった。
しかし、その下半分、体にはタオルの上からでも分かる豊かな乳房がついていた。
もつ一つの声の持ち主である百手矢射子のものである。

休日デートをしていた宏海を太臓が召喚した時に矢射子も一緒に吸収されてしまい、再び融合してしまったのだ。
更に運悪くアスタリスクゲートを抜けた先にはドブ川があり、落ちた二人(?)はヘドロまみれになってしまった。

その後、太臓を振り切った宏海たちは、なんとか宏海の家までたどり着き現在に至るのだが――

「それにしてもヒドイ匂いだな。早く洗わねえと染みつきそうだ」
シャワーに手を伸ばそうとするが体が動かない。もう一人の意識が体を強張らせているらしい。
「矢射子?」
「は、はい!」
「……そんな緊張しなくても、見ないようにするから心配すんな」
「う、うん。…なんか前の事思い出しちゃうわね…」
「前?あー…あん時か。親父が乱入してきたんだったな。それだったら大丈夫だ、親父出張してっから」
「え?」
「誰もいないから安心して入れるだろ。ゆっくりしてけばいいさ。ま、何もねえけどな」
「そそ、そうね!誰もいないなら安心して…………ってェェェ!しゅっ、出張?!」


ヘドロで固まった髪をシャワーの温かい湯が溶かしていく。シャンプーを手に取ると矢射子の細い指が宏海の髪を撫でるように馴染ませていった。
普段の自分なら乱雑に扱う洗髪も指が違うだけでこうも繊細なのかと宏海は思った。湯気が満ちた風呂場に髪を洗う音だけが響く。
出張発言以来、会話があまり弾まないのは、相手も似たような思いなのだろうか。


(……やべえ……自信ねえ……)


洗い終わり、キュッと蛇口を閉めた後ほんのニ・三秒ほど固まっていたが、宏海は目を閉じるとやや裏返った声で矢射子に声を掛けた。

「んじゃ、目閉じてっからさっさと洗っちまうか」
「あ、……う、うん」
宏海が目を閉じた事で矢射子の視界も暗くなる。矢射子は自分の鼓動が跳ね上がるのを感じていた。
恥ずかしいから、とそれまで巻いていたタオルを外すと矢射子の体を覆う物は何も無くなった。ただでさえ緊張する状況を暗闇の中で無防備な状態が後押しする。

前回と違って、今回は体にこびりついた汚れを落とさなければならない。体に触らず済ませるのは不可能だったので、手探りで石鹸を探す。
宏海にとっては勝手知ったる我が家だが、状況が状況だけにうまいこと見つからない。
「痛っ!」
「うおっ!」
案の定壁に激突し、したたか額を打ってしまった。
激突のショックで開きそうになった目を、宏海が開けないように眉間に力を入れる。
「阿久津……」
「…ハハ、自分家なのに案外難しいモンだな」

額を擦りながらも胸や体に腕が当たらないようにしていることは見えなくても判った。


「阿久津、目……開けてもいいよ」


「何言って――」
「ほ、ほら、これ以上怪我したら大変だし、それに」
喉がコクンと鳴る。
一呼吸おいて矢射子は小さく続けた。
「阿久津なら……いい」


体を共有している上に視覚を閉じてる分、普段より敏感になっているのかもしれない。
二人の鼓動が一つに重なっていた。それはまるで体全体が脈打つかのようで、鼓動を打つ度に気持ちが高ぶっていくのが分かる。
暗闇の中に見えないはずの互いの顔が見えた気がした。

「――分かった。開けるぞ」
意を決したのか、または確認とも取れる宏海の言葉に矢射子は黙って一度だけ頷いた。

眉間に入れた力を緩め、そっと目を開く。
壁に反射する電灯の明かりの眩しさとモヤで最初はよく見えなかったが、それもほんの一瞬だった。
クリーム色の壁に薄いブルーのタイル、天井近くの窓から夕焼けに染まる空が見える。
ややぎこちなく下に目線を下ろしていくと、みずみずしい豊かな白い双丘が片腕によって先端を隠されながらも、その腕からこぼれんばかりの存在感をアピールしている。
おずおずと腕を外すと、やや荒い呼吸に合わせて上下する乳房を彩るように桜色の乳首が顕になった。
普通なら見ることができない矢射子の視点から見る裸体の艶しさに、つい宏海は見入ってしまっていた。




「あああ、あ、あの…そんなにジッと…されると……」
「見ていいんだろ?」
「!!」

恥ずかしさに耐えかねた矢射子の主張だったが、宏海の意外な返事にやり込められ、二の句を継ぐことができなかった。

「…バカ、冗談だ。風邪ひかねえうちに洗っちまうぞ」

半ばパニック状態だった矢射子が、自分がからかわれた事に気付いた時には、宏海はすでに手早くタオルに石鹸をつけ、首から汚れを落とし始めていた。
冷静ともとれる宏海の言動に矢射子も少し落ち着きを取り戻したが

(あたしだけテンパってるみたい…阿久津は…何ともないの?)


(ホント冗談じゃねえ。このままじゃ何するか自分でも分かんねえぞ)

矢射子の思いを知るはずもないが、宏海もまた内心頭をかかえていた。

(とにかく早いトコ洗っちまわないと…って、何で女ってのはドコもかしこもこんな柔らかいんだ!)

二人にとって融合していたのは、ある意味救いだったかもしれない。

両腕を擦り終わった所で動きがピタッと止まる。
「あー…洗うからな」
「い、いいいいわよ」

息苦しくなっているのは擦っていた間、矢射子が声を出さないよう時々息を止めていただけじゃないのだろう。体の高まりを宏海も自覚していたが、それが自分のなのか矢射子のものなのか分からなくなっていた。




右手が鎖骨を滑り降り、左の乳房の上をゆっくり擦り始めた。柔らかだが張りのある乳房が手の動きに合わせて、まるでプリンの様に左右に揺れ、形を変えていく。
矢射子にしてみれば自分の体なのだが、擦り方や力の入れ具合の微妙な違いに宏海の存在をいやが上にも感じさせられていた。

(落ち着くのよ、あたし!これはあたしの手!あたしの手!)

胸の形に沿って大きく円を描く様に洗っていると、力んだ指の爪が軽く乳首を引っ掻いてしまった。
すでに痛いくらい隆起していた突起は最も敏感になっていて、矢射子は堪らず声をあげてしまう。
「んっ!」
自分のあげた嬌声で恥じらいが頂点に達してしまった。顔が一気に赤くないなり、頭に血が登っていく。

「あ…や、違うの!これは…」
「……矢射子、悪ぃ」
「え?」

パシャッと水気を含んだタオルが床に落ちる。
タオルを離した両手が、それぞれ下から持ち上げるように乳房をわし掴みすると、豊かに実った白桃を覆い切れず指先は柔らかな果肉に食い込んでいった。




「はぁっ!ん…あ、亜久津?!」
「……限界がきちまったみたいだ」

そう言うと宏海は手に力を入れ、矢射子の胸を揉み出した。手の中で弾力のある乳房がふにふにと風船のように踊る。
「ふあっ……やっ…ま、待っ……!」
揉みながら親指をずらし乳首にあてがうと、指の腹を押し当て転がすように捏ねた。ピリッとした鋭い疼きが二人の全身を貫く。
「やあぁっ!あっ……はぁ」
胸から与えられる刺激と、好きな人に体を弄られているという現状は矢射子の感度に拍車をかけていた。それは宏海にとっても同然で、矢射子の体に流れる刺激は宏海の興奮も高めていく。

「こんなの………は、恥ずかしいっ……」
「お前って、ホント…訳分かんねえヤツ…だな」
「なんっ……で、そんな、んっ……言うの」
「嫌なら、殴るなり何なり、すりゃいいだろ」
「ふあっ……そ、それは…………」

押し寄せる快感に飲み込まれそうになりながらも、矢射子は吐息混じりで続けた。

「亜久津が……す、好きだから…」

息も絶え絶えな言葉に手の動きが止まった。快楽と羞恥のせめぎ合いから一旦解放され、肩で大きく息をつく。

「……んな事言ってっと、明日の朝どうなっても知らねえぞ」
「?…………!!」

少し考え、宏海が言わんとする事を理解すると、火が出そうなほど顔が真っ赤になった。

その瞬間、ボンッと小さな爆発音と共に白い煙がもうもうと立ち込め、あっという間に風呂場は煙に覆われてしまった。

「な、なにこれ?!」
「何も見えねえ…ん?」

手探りで窓を開けると、煙は一分もしない内に薄くなっていき、やがて周囲の様子が見えるようになり、二つの影が姿を現した。

『ああああーーー!!!!』

融合が解けた二人が異口同音に叫ぶ。

「なんっ、何で戻ってるのー?!」
「一晩寝なきゃ戻らないんじゃなかったのか?!」

お約束の全裸で戻った体を隠したが、洗っている途中だったためか、所々まだ汚れや泡が残っていた。

「戻っ…ちゃった」
「ああ…………」

今日何度目かの静寂と緊張が取り囲む。
さっきの会話が二人の頭をよぎっていた。



「……どうする?」









<<作品倉庫に戻る



inserted by FC2 system