悠×あいす【媚熱ゲーム】 名無しさん@ピンキー :2006/02/16(木) 00:31:54 ID:zNnTqkSj


昼休みの理科実験室は、しんと張り詰めた冷たい空気に満ちている。
こんな時間、こんな場所に生徒も教師も来る筈がない。
それが分かっていたというのにどうしてあっさりと誘いに乗ってしまったのだろうと、あいす
は自分の軽率さを後悔し始めていた。
左手首は薄いハンドタオルで机同士の境にある蛇口に縛りつけられ、逃げ出すことすら出
来なくなっている。
「何のつもり?こんなことをして」
だが、言葉はまだ余裕を繕っている。そうしなければこれまで辛うじて保っている自我が
崩壊しそうに思えたのだ。
どこまで目の前の少年に通用するかは分からないが。
蛇の本性と眼差しを持つ悠は、そんな思いなど一蹴するように笑みひとつ漏らさずあいす
を見下ろしている。
「別に、ただ遊びたくなっただけだ」
「あのバカのお守りはしなくていいの?」
「宏海がいるだろう。それよりも、王子をあまり悪く言うな。あれでもいい暇潰しにはなる」
「あんたの方がひどいことを言ってると思うけど?」
「黙れ、あいす」
昼休みは時間が短い。つまらない言い争いをしている暇はないとばかりに、いきなり女の
ように冷たい手があいすの顎を掴んだ。
「…うっ」
そのまま顔が近付いてきて唇が重ねられる。まるで血が通っていないように唇も舌もひん
やりと冷たかった。雪人のあいすでなければ飛び上がりそうなほどに。その冷たさに惑わ
されているうちに、何かが喉を通ったような気がしたのは決して錯覚ではないのだろう。
「悠、何をしたの」
「我が一族秘蔵の拷問薬を飲ませただけだ」
大したことがない、と言わんばかりの口振りの中にこの状況を面白がっているような要素
がある。あいすにとっては最もたちの悪い展開だった。
「つまり、有体に言えば媚薬」
「!何てことを」
油断のならない相手に対して、これまではまだ甘く見ていた。それほど関わり合いがない
のだから自分に実害はないのだと。しかし、そんな思惑はこのナーガの少年には全く通じ
はしなかった。






「やっぱさー、あいすの奴は完璧に俺に惚れてるな。分かるぜ」
午後の空は雲がやや多くなっていたが、それでも上々の天気だ。屋上は風がまだ冷たい
けれど、日向にいれば問題はない。
普段側にいる悠が今ここにいないこともそれほど気にならないのか、太臓はいつものテン
ションで勝手な妄想を飛ばしている。少しうんざりとしながらも、お守りを押し付けられた形
の宏海がぼそりとツッコミを入れる。
「普段の言動から、どうしてそう結論づけられんだよ」
「そりゃ、やっぱり俺ぐらいになると神レベルの察知力っての?そーゆーのがあるからさ」
「へーほー。ま、妄想はタダだからな」
太臓の話をまともに聞いていたらとても身が持たない。適当に受け流すことを覚えた宏海
は、半分ほど残っていた缶コーヒーを一気に飲み干した。
それにしても、悠はどこに行ったのだろう。いつもは面白がって必要以上に構っている太臓
を今日は放ったままで。
だが、まあそれもたまになら面倒を引き受けてやろうという気持ちにはなっていた。悠だっ
て一人になりたい時もあるだろうし、それなりにもてているのだから野暮用という可能性も
ある。
「ああ、いい天気だなあ」
見上げた空はうららかな春の陽気に満ちていた。

ぴちゃん。
左手首が結びつけられた蛇口から、一滴の水が滴った。
理科実験室には異様な雰囲気が漂っている。
「…こんなことをして、無事で済むと思わないで…」
拷問薬の効果が早くも出始めている。体の中から抗い難い熱が沸き上がってきているこ
とを忌々しく感じて、あいすは息を乱しながらも目の前の少年を睨みつけた。
「こんなザマで、よくそんなことを言えるな」
悠はまるで気にならない様子で乱れ始めたあいすを観察するように腕組みをしながら顔を
近付けてきた。
「いいから、早く腕をほどきなさい」
「断る」


一言で切り捨てた悠の手が、あいすの制服にかかった。
「あっ…やめなさい!」
返事はなかった。ただ淡々と課された作業をこなすような性欲を全く感じさせない手つき
が、かえって火照っていく体を刺激している。
「あ、や、やめてったら…」
跳ね除けようとした右腕すらも、がっちりと掴まれて防御すら出来なくなってしまった。
あっと言う間にブレザーとブラウスのボタンを外してしまった手が、その下のブラに触れて
くる。ブラごとやわりと乳房を掴まれて、思わず声が漏れた。
「う、んっ…」
その反応に満更悪くない気分になったらしい。普段から笑みひとつ見せない悠の声音が
微妙に変わる。
「お前も、やっぱり女だな」
「…何よ、いきなり」
「触られれば浅ましく感じるのが、面白い」
侮蔑のような言葉に、怒りでカッと肌が燃え上がった。わざわざこんな風に人気のない場
所に呼び出し縛りつけ、御丁寧に薬まで飲ませて、この少年はただあいすを陵辱するだ
けでは足りないのだろうか。これではまるっきりオモチャと一緒だと哀しさを通り越して情
けなくなった。
だが、そんなあいすを嘲笑するようにぐいっとブラが引き上げられ、あらわになった乳房に
直に触られた。小振りだが形のいい乳房が、悠の手の中でほんのりと誘うように薄紅に
染まる。
「あ、ぁ…」
こんな自分をどうしても認めたくなくて、あいすは顔を背けた。どんなに翻弄されてもこの目
に映らなければ最低限は心で否定出来る。こうなったからには、きっと悠の思いのままに
されるのだから、何をされてもそうして遣り過ごすつもりでいた。
それなのに。
わずかも逃れようとするのを許さない、と執念深い蛇の本性を持つ少年は隅々までも縛り
上げようとしていた。



「あぁあ…ダメ、ダメっ…」
机の上にぐったりと体を預けて、あいすはひたすら喘ぎ続けていた。じわりじわりとおぞま
しいばかりの拷問薬が体の隅々、指の先までも浸透していて、もう氷のように冷たくて硬
い理性も崩れ始めている。
まさにまな板の上の鯉となったあいすをいたぶるように、覆い被さる悠の片手がやわやわ
と乳房を揉み、舌と唇で舐めしゃぶる。最初の時の経験から察知していたように、悠はそ
れなりに女の扱いには慣れているらしい。乳房を揉む手の力は的確で、乳首を舐めている
舌遣いといったらこの上なく官能的だ。
翻弄されている、それがまだ許せなくてあいすは足掻くように潤みきった瞳で弱々しく声を
出す。
「…ねえ、やめてったら」
「今更か?」
「…悠、嫌。もう嫌…」
ガラスの器に入った水が、ぎりぎりまで注がれている。そんなイメージが頭の中で膨れ上
がっていく。言葉とは裏腹に表面張力の限界までも、体の中で熱と淫欲が溢れてしまって
いる。
嫌と言いながらもめくれたスカートの中では、ショーツをとろとろに濡らすほどの淫らな蜜が
滴り落ちて机の上に透明な溜まりを作っていた。
「ん…あ、いやあああっ!!」
既に朦朧としていた意識が一気に覚醒する。もう用を成さなくなったショーツを剥がされて
関節が痛くなるほど思い切り足を開かれたのだ。中心では熱を帯びたあいすの女の部分
が、薬によって浮かされたように充血しきって花と咲いていた。
「もういつでもいいようだな」
その時だけぞっとするほど冷えた声が降る。気のせいではない。
だが、それを疑問に思う間もなく再び意識が沸騰した。乳首を舐めていたあの素晴らしい
舌遣いが、美しい紅色の花のようになったあいすの淫核を舐め始めたからだ。まさかこん
な風にされるとはこれっぽっちも思っていなかったせいで、何もかもが頭から吹き飛んで
しまう。
「あ、あんっ、あぁああっ…!ダメ、もう、ダメえぇっ!!…」
どっぷりと快楽に囚われてしまったあいすには、もう何の枷もなくなってしまった。指先で
開かれ、舌で嬲り抜かれる刺激でたらたらと蜜が滴り落ちる感触さえもひどく感じさせる要
素でしかない。
「はあっ、は…こ、こんなのは嫌…嫌なのっ…」


正気を失ったあいすは、呆けたような蕩けきった表情をして唯一自由な右手で自分の乳房
をしきりに揉んでいる。
ぺろりと蜜で濡れた唇を舐めながら顔を上げた悠の目が細められた。その奥に確かにぬめ
ったように淫らがましい欲が見え隠れしている。
「…そろそろ時間がない。行くぞ」
「えっ…」
あまりにも低く静かな声に正気を取り戻しかけた刹那、この間よりも硬く太いものが唐突に
あいすを貫いた。意識どころか血までも沸騰しそうな激しさに、これまでにない大きな声を
張り上げる。
「あっ、あああっ…!!」
一度奥まで突いた肉棒が、先端を残して引き抜かれていく。更なる刺激を欲してじれった
く腰を捩る間も許さない、とばかりに先程以上の強引さで何度も突き上げられてくらくらと目
眩がしそうになった。
こんな風に好き放題に陵辱されて、有り得ないことの筈なのにすごく気持ちがいい。良過ぎ
て何もかもどうでも良く思えるほどに。
すっかり制服を乱されているあいすとは逆に、詰襟の襟元すらもくつろげないままでいる悠
はこんな時でもほとんど変わりがなかった。ただ、唇に触れる吐息だけが興奮を表すように
異様に熱いのが不思議と嬉しくて、右腕だけで必死で縋りつく。
「あ、あんっ、悠…」
「あいす、もっと見せろ。こんな淫らなお前を曝け出せ」
「はぁあん…いい、いいの…もっとめちゃくちゃに、してよおぉっ…」
肌を染め、喘ぎ続ける唇が繊細な動きをする舌で舐められる。粘膜が激しく擦り上げられる
刺激が全身を麻痺させていた。ぐちゅぐちゅと断続的に響く卑猥な音すらも、もう耳には届
かない。
「んっ、ん…んう…」
重ねられた唇の間から、飲み切れない唾液が零れ落ちる。もう、何も考えられずに翻弄さ
れるだけだった。そうしている間に、悠にはもう限界が来ていたらしい。
「あいす、出すぞ」
「…あ、悠」
とんでもない、と言おうとしたのに、言葉が出ない。


わずかに体が痙攣した後、抱き締められて大きく突き上げられた。
激しくがくがくと揺さぶられて、あいすの敏感になった膣内に大量の精液が放出される。
「ひゃっ…あぁっ…」
あまりのことに、呆然と目を見張ったままになった。
最初だけならともかく、二度目まで中に出されてしまった。これはもうわざとやっているとし
か思えない。だが、それよりもあいすには切羽詰ったことがある。
遠くで予鈴が鳴っていた。ようやく腕がほどかれて自由になった後も、身支度をするのが
やっとで体が全く動かない。
あいすは、まだ達してはいなかったのだ。
体の中でどす黒く渦を巻いている熱が開放されないまま溜まっている。じれったいような
もどかしさが指先までも支配していて、何もする気にはなれなかったのだ。
「…あいす、五時間目が始まるぞ。急げ」
そんな切ない気持ちを当然知っている筈の悠は平然としたものだ。床に座り込んでしま
ったあいすの頬を柔らかく撫でてくる。
「悠…どうして」
だが、返ってきた言葉は予想だにしないものだった。
「拷問薬、と言っただろう?効果は平易に言えば媚薬だが、何の為に拷問に使うと思って
るんだ」
「…何の、為よ」
こればかりは全く分からない。
少年は、せせら笑った。
「どんなに感じても決してイけないのは、受ける側にとって最悪の結果だろうが」
「…あんたって…」
本当に最悪だ。最初からこうするつもりで使ったのだ。うかうかと最初の呼び出しに乗っ
た自分の愚かさを今更嘆いても取り返しがつかなかった。
「体が動かないだろう。授業には出られないな。隣の準備室にでも隠れていろ。今日は
ここで授業をするクラスはない」
「そんな…」
「放課後に、また遊んでやろう。解毒薬も飲ませる。それでいいな…じゃあ俺は行くから」
これから二時間、このまま熱を溜め込んだまま放置されるのかとあいすは目の前が暗く
なった。こんな仕打ちは地獄のようだ。
そんなあいすを嘲笑うように、もう後も振り返らない悠によって理科実験室のドアは無情
にも閉じられる。



「悠、お前一体どこに行ってたんだよ」
授業開始間際に教室に入って来た悠に向かって、太臓はぶうぶうと文句を言う。
「ええ、ちょっと私用がありまして」
「まさか野暮用じゃないだろうな」
「いいえ、私が王子を差し置いてそのようなことをするとお思いですか?」
「そっか。それもそーだな」
いつものテンションの会話だ。何も普段と変わることがない。
そんな二人の遣り取りを側で眺めながら、宏海はわずかな違和感をどうしても感じざるを
得なかった。何に引っ掛かっているのかは良く分からなかったが。
今日はいい天気だったけれど、明日もそうとは限らないようなものかと無理やりに自分を
納得させるしかない。
更に雲が多くなった空を二分割するように、飛行機雲が長く尾を引いているのが窓から見
えた。



終わり



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