秘密の時間(あいす×宏海)
2006/10/13(金) 04:34:30 ID:iT3l0QPN



いつからだろうか、佐渡を名前で呼ぶことになったのは
勿論、人前では佐渡と呼ぶ、周りが煩いのは目に見えているからな
「シャワー借りるわね」
「おいおい、もう少しゆっくりしたら・・」
「何言ってるの、あなたの父親が帰ってきて、こんな姿見られたらどうするの?」
「まぁ、そうだな」
佐渡は「他にまともな男がいなかったから」と言っていたが
俺達の関係を唯一知っている伊舞からは「あいすさんはお兄ちゃんの話しかしないんだよ!」
とかなんとか言っていた、なんとも複雑な心境だが
他に佐渡の真意を知る術がないから仕方ない
なんせ学校で俺達の関係は秘密で警戒して一緒に帰ることもまずない
まぁ、週に数回こうして佐渡が家に遊びに来るのが
俺達の関係を立証する全てだろう、間界領事は何かと忙しいらしい



「あなたもシャワー浴びてきたら?」
着替えて戻ってきた佐渡はそういうとテレビをつけ、夕方のニュースを見始めた
「ああ」
こうして見ると学校でいつも見るのと変わらない佐渡あいすだ
俺は気だるい体を動かしながらシャワーを浴びた
(一応髪の毛落ちてないか確かめとくか・・・)
親父に佐渡との関係を知られたらこの間以上に何しでかすかわかったもんじゃない
「ふぅ、まだ平気なのか?」
「ええ」
佐渡の隣に腰を下ろしテレビに目をやる
「牛乳、勝手にもらってるから」
「ん?ああ」
佐渡もすっかり家の仕組みを把握している、俺よりも詳しいかもしれない
そんなことを考えていると佐渡が体を少し寄せてきた
(こういうとこは普通の女の子なんだな)
そして俺の肩に頭をもたれながら話掛けてくる
「名前」
「ん?」
「またHのとき佐渡って呼んだ」
「そうだったか?」
「そうよ」
「悪かった」
「名前」
「悪かったよ、あいす」
「・・・ええ」
正直、名前で呼ぶのは照れ臭い、普段佐渡って呼んでる分尚更だ


――――

「じゃあ、帰るわ」
「送るか?」
「平気よ」
今日もまた、少ない二人だけの時間が終わった
「次はいつ来れるんだ?」
「多分・・・明後日ぐらいね」
「そうか」
こんな会話もいつものこと
「宏海」
「ん?」
「私が来れないからって他の・・」
「・・あいす」
「んっ」
「またな」
これは初めて
「・・バカね」
「あぁ」
ゆっくりと閉まる玄関を見ながら俺はせっせと後処理に取り掛かった

end





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