【43章】木嶋×吉下
2006/06/14(水) 20:26:06 ID:qfhmfClg



「吉下、もう諦めたらどうだ」
顔を真っ赤にして本気で暴れる姿など、こうでもしなければ見られない。
組み伏せた身体は予想以上に甘く柔らかく―そして、どうしようもなく気持ち良い。
感触を楽しむ様に、色づいた肢体をゆるりと揉み撫でる。

「…気持ち悪いから触らないで」
渾身の怒りを込めて見上げてくる瞳すらも情欲を煽る要素にしかならず、
木嶋の唇からはふう、と熱を帯びた吐息がこぼれた。
手の動きにいちいち反応し身体を震わせている奴にそんな事、言われた所でなんの迫力も無い。

半ば引き破った様な女物の制服が、ベッドと持ち主の間に挟まれ皺を作っている。
何度も嫌だと叫んだけれど、一切を聞き入れて貰える事は無く―――
あられもない姿で素肌を晒した彼の幼馴染みが、唇を噛み、屈辱に肩を強ばらせていた。
もう長い事この状況が続いていたのか、口調こそはっきりしているものの、
声音にあまり覇気は感じられない。

「いい加減に放してくれない!?ね、ぇっ……………んっ、やあっ……!」
拒絶の声などお構い無しに、既に濡れた秘所へと手を伸ばした。
制止しようと掴み掛かってきた華奢な手を、逆に掴み返して握り込む。
そのまま彼女自身への花心へと誘導してやろうとすると、あまりの出来事に
耐えられなかったのか、吉下は驚愕の面持ちで弾く様に手を引いた。
無駄な事はしない方がいい、含み笑いの表情だけでそう告げてやり、
何事も無かったかの様に敏感な箇所を擦り上げる。焦らす様に緩く、何度も。
そっと割れ目を開くと、彼女のそこは刺激を待ち望むかの如く震えていた。

「……気持ち悪いってお前な、」
十分すぎる程に潤んだ蜜壷に、長い指は何の抵抗も無く中へと挿入された。
「ふあっ!…………あ、…あ、………っく」
探る様にぐちぐちと掻き回される。深く浅くとリズムを付けて、長い指が抽送を繰り返した。
止めどなく零れていた快楽の蜜を絡め取った手がずい、と目の前に突き出される。

「これでもまだ言うか?」
二ヤつきながら勝ち誇った様に見下ろしてくる男を直視したく無かったのか、
吉下は無言でふいと目線だけを逸らした。当てつけの様にその指を首筋へと撫で付けられて、更に眉を顰める。
どうにもならなかったが、下手に肯定などはするまいと口を引き結んだ。

愛液を肌に塗り込める様に這っていた木嶋の指は滑る様にして徐々に移動し、やがて再びソコへと戻って、
「……………………!!」
息を飲む間も無く2本に増えた指に浸食され、彼女の身体は再び内部から嬲られ始めた。


「どうなんだよ」
「……はっ、ん…………っう……!」
肯だろうが否だろうが、もう何も言えたものではない。紡ごうとする言葉は全て快感の吐息へと変わるばかりで、
身体の中がじりじりと溶けるような錯覚に陥る。散々弄られたにも関わらず与え続けられる刺激の連続に
全てを奪い取られ、最早耐える体力も気力も残っていなかった。
親指で秘核を軽く押された瞬間に腰が跳ね、彼女はすぐにくたりと弛緩する。

その様子を嬉々として見届けた木嶋は長い指を無造作に引き抜くと、一旦身体を話し、再び体重をかけ直した。
だらしなくも先走りで濡れた己の先端を、同じく潤みを持った彼女の秘部に押し当てて入り口を探る。
ぬるぬると滑る感覚に思考を捕われ、一気に頭に血が上った。
「き……木嶋君、無理!…………そ……もう、無理…………」
「なるほど、もう我慢が出来ないと。では、淫らで可愛い仔猫ちゃん、仰せのままに」
「なあっ!?違っ、逆!やめて!…………い…………っあ、あああッ!!」


―――下腹部に籠った熱が沸騰しそうだった。
一度ぐちゅり、と淫らな音を立てて差し入れたモノを緩慢な動きで引き抜き、
確かめる様に再び貫いてはは小さく動かす。ひくひくと締め付ける内壁に、擦り付ける様にしてかき混ぜる。
脈拍と律動のタイミングを合わせる様に、流れを持って。

「はあっ………!……あ、あっ、んっ…………」
粘膜が擦れる事によって生まれる鈍痛と、それを簡単に上回る快楽が彼女を襲う。
刺激を求める泉の中心は、押し入ってきた熱の塊をぎゅうと包み込んで柔らかに擦り上げた。
断続的に来る熱と重さに翻弄され、苦しいのか、気持ちが良いのか、それすらも判別出来ない。

深く貫いた状態でゆっくりと揺らし、角度を変えてはまた打ちつける。
探る様な、そして抉る様なその動きは、確実に吉下を追い詰めていった。

「…くっ!……………な、気持ちいいん…だろ?」
おぼろげながら、彼女が限界に近い事を感じ取り、
抽送の速度を徐々に上げながらわざと耳元で囁いてやる。
「ちがうっ、ちが―――――……………ぁん!」
必死で首を左右に振りながらも、拠り所の無かった片手がいつの間にか、木嶋の背中に回されていた。

このまま果ててしまうか、そう思った瞬間、
「っ、ね、ぉ願い……っ…………ああ………!」
細く高く、懇願する様な切ない声に―――木嶋はぴたりと動きを停止した。


「……!?」
拍子抜けした様に男を見上げる表情の中に、焦れた瞳の色を見つけて確信する。
――――――どう見ても、”お願いだから止めて欲しい”奴の反応じゃあない。

「吉下」


「それは、どっちの『お願い』なんだ?」
「…………………」

朦朧とした意識の中から彼女が紡ぎ出した言葉を聞き逃さなかった。
訊かれた問いに答えかねた吉下は、恨みがましく潤んだ目をそのままにして、黙り込む。

今まで散々否定ばかりしていた、つれない幼馴染み。強情な彼女が陥落する瞬間を、沈黙の中でじっと待つ。


暫くして唇から零れたそれは、殆ど涙声だった。

「…………っ早く、楽に……………なりた、い」
「敬語で」
「……………………です」

消え入りそうな語尾を最後まで聞き終わったかと思うと、再び一気に突き上げ、動かした。
焦らされていたのはこちらも同じである。何せ黙っている間も銜え込んだままの密壷は正直で、
刺激を求めて不規則に締め付けて来るのだからたまったものではない。
「やっ、………あ、ああっ………………………いやああぁッ!!」
鈍い水音と共に、痺れる様な快感が身体全体を駆け巡る。
繋がった部分からは二人の混ざった証がつうと肌を伝って滑り落ち、シーツに更なる染みを作った。


「―――で、何だ、お前は三角形フェチか何かか!?そんな奇っ怪な性癖知らなかったぞ!!」
「いやいや何言ってるかさっぱり分からないんだけど!」

しばし脱力し、荒い息を整え、緩慢な動きで結合を解いてそして―――――
絶頂の余韻もそこそこに。組敷いた体勢はそのままで、言葉だけの応酬が再開されたのだった。
かたや熱い炎、かたや冷たい炎。瞳にたたえた温度は違えど、明確な意志の宿った視線が交錯する。

そもそも自分達は、何かと槍玉に挙がるクラス2―B、問題行動を起こす生徒について
談義していて―――そう、最大の目の敵にして嫌悪している”あの”百手太臓を、
事もあろうに擁護する様な発言をしたのだ、この女。

(くそ、どこまでシラを切る気だ…っ)
どこか諦めの混ざった表情の吉下はそれでも、意味が分からないと突っぱねる。
どうしてコイツは、自分の癇に障る様な発言をしてくるのか。
胸が締め付けられる様な痛みと共に、先程とは違う理由で頭に血が上った。
この上無く近距離に居るにも関わらず、何かが遠くてもどかしい。

昔から強烈に親しい仲という訳では無かったけれど、持ち合わせた能力の近さからか、
委員、会員、役員、そういった席では必ずと言って良い程顔を合わせ、行動を共にしていた。
お互いの性質も把握した2人。ぽっと出の奴らなんぞには到底介入出来ない、
強固な繋がりが有る筈だというのに。

(なのに――………………何故、俺じゃ、無いんだよ。)


「………なあ、吉下」
己のアイデンティティを賭けて、真剣に問う。この俺が、あんなバカより劣っているなど認められない。
―――――――容姿も、頭も、その他どれをとっても、
「俺の方が上だろ?少なくとも、あのオニギリ頭よりはずっと」


「冗談でしょ?」
顔色一つ変えずあっけなく返された答えに、木嶋は真っ白に固まった。
「この状況で良くそんな台詞が言えるわね」


「貴方がやってる事は太臓君以下よ」

ぴしゃり、と。
微かな、しかし会心の冷笑で放たれた一言は、遥か宇宙から隕石を呼び、
恐竜すらも滅ぼす熱波と共に星を吹き飛ばす勢いで胸に突き刺さって――――――




「―――――ぐわああああ何だこの展開!!」

ガコン!と豪快な音を立てて、プラスチック製のフタ付きゴミ箱が揺れる。
時刻は早朝5時も半分回った所。跳ね上がる勢いで身を起こした木嶋が、
握りしめたティッシュを力任せにゴミ箱へと投げつけていた。
しかしろくなカーブを描かず直線的な軌跡を辿ったゴミは結果的に床の上に落ちたのであり、
木嶋は更にイライラしながらゴミ箱に近づくと、欲の残骸を包んだ紙を再度、直に突っ込んだ。

二度寝するには足りず、かといって何もしないで朝を待つのも暇。
そんな半端な時刻に目覚めてしまったので、自らの意志と関係無く元気にしていた己の愚息に
何となく手を伸ばしてみた。この時間でまあその、処理でも、と。
そしてたまたま頭に浮かんだのが、旧知の仲の眼鏡女だっただけ、それだけ、なのだが。
(―――――洒落にもならんわっ!俺の邪念に対する吉下の呪いか!?)

6月、ドキ高も衣替えの季節となり、校内に満ちる色彩は一気に明るさを増した。
ふと隣に座る生徒会会計を見た時に、白いワイシャツの下にうっすら透けて見える
下着の線に目が止まってしまい、ベスト着ろよ、とかあれ吉下こんなに胸あったっけとか
色々考えていた結果の肥大しまくった妄想で、はいすいません俺がわるかった。

どこかで聞きかじったメガネっ娘エロい説を思い出し、一人で盛り上がってみたものの。
彼女をネタに使う事に多少の罪悪感でも働いたのか、気が付けば、
自己満足の為の筈の想像世界は妙な現実感に浸食されていた。

「……………………」
静寂の中、ずーん、と効果音が聞こえてきそうな暗さで夜明けを迎える男子高校生ここに一人。
どこからか微かに聴こえるニワトリの鳴き声がまた、この上なく間抜けで虚脱感を誘う。

(―――………妄想の中ですら勝てんのか俺はァァァーーーーッ!!?)
心の中で大絶叫して、がっくりとシーツの上で手と膝をついた。


619 :木嶋×吉下 :2006/06/14(水) 20:31:13 ID:qfhmfClg
その体勢で硬直したまま30秒程経った頃だろうか、今度は突然はっ、と顔を上げる。
わたわたと周りを見渡すと、目当ての学生鞄は枕元の直ぐそばにあった。
肩にかけるベルトを掴んで引き寄せ、中をごそごそ探って手帳を引っ張り出す。
午後の予定欄に女の子二人の名前を確認して、小さくほくそ笑んだ。
そう、これこそが現実だ。

(放課後に女の子とデートなど、アイツには有り得まい。
 ―――やはり俺様に敵うわけが無いんだよ、百手太臓!!はははははは…!!)
怒濤の早さで完全に立ち直り、一人ヒートアップして仁王立ちになった木嶋は、
寝間着のまま、窓から差し込む朝日に向かって高らかに吠えた。




「木嶋くん!?………………………………………どうしたの木嶋くん!」
しかし約12時間後、持ち直した筈の彼のプライドは完膚無きまでに叩きのめされる。




そして更にその翌日、ドキドキ学園の事務室に届く一本の苦情電話。
「白昼の逢魔市中通りにて、全裸で発狂している御校の学生がいた」との目撃証言は、
いつもの如く、校長権限でうやむやになった。



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