【doll】紋×太臓
2006/06/08(木) 20:47:35 ID:E7ylwStn



「というわけで、呪いの藁人形を作ってみました」
「”みました”じゃねえだろ」

休み時間、2-B前廊下。教室内で自前の枕に突っ伏して盛大に寝ている太臓を尻目に、
男二人が会話にもならない会話を繰り広げている。

「つーかそれ、太臓そのものじゃねーか!!ワラどこだよ!?」

悠の右手には、全長5〜6センチ程の「太臓そっくりな人形」が握られていた。
三角頭に、小さな胴体。頬の窪みまで再現されたその表情は、なかなかに愛嬌がある。

「外観は円に作らせた。どうだ、良くできているだろう」
「いや、確かにそっくりだけどよ・・・」
「藁はこの内部に埋め込まれていてな」

言いながら、ずいと宏海の目の前に人形を近づけた。

「草木も眠る丑三つ時にありったけの念を込めて攻撃すると、絶大なる痛みを相手に与えられると言う」
「シャレになんね―――――!!流石にマズいんじゃねえのか、それ!!」
「不死の間界人、そのトップに立つ王子だぞ?そう易々と消滅させられる程、ヤワに出来ていない。馬鹿にするな」

説明を聞いて血相を変えた宏海だったが、悠は悪びれた風もなくきっぱりと言いきった。

―――――ああ、ろくでも無い事がまた起きる。
どこか嬉々とした声音で語るナーガの少年を横目にして、宏海は頭を抱えたのであった。
何も知らずに幸せそうな寝言を言う太臓に、珍しく同情の念を抱きながら。


「え・・・これを私に?」
「造形が簡単だからと言ってな、谷が人形の試作品として作った物だ。余ったのでな、一つやろうかと」
「貰ってもいいの?本当に?…………ありがとう、とっても素敵ね!」
宝塚の方ですか、と思わず尋ねたくなる様な雰囲気を持つクラスメイト、その凛とした表情が
一瞬にしてぱああ、と明るくなる。
「服もあるぞ。三つ編みバージョン、ブリーチバージョン、女学院バージョン、姫バージョン……」
「全部女装なの!?可愛いからいいけど…!」
付近の生徒が理解出来ないといった表情で悠と紋を見たが、2人は一向にお構い無しだ。

悠は小さな太臓を、彼女の机にぽんと置いて差し出した。
「好きにするといい。じゃあな」
既に紋の身体から危ないフェロモンが出ているのを感じ取り、そそくさと退避する。

「さて…後は運任せだな」
きゃあきゃあ言いながら帰って行く紋を表情の読めない眼で見送りながら、呟いた。


―深夜午前、2時半。紋は人形をうっとりと眺めていた。
ミニチュア太臓は美術教師が作っただけあって、非常に精巧に出来ている。
滑らかでさらさらの、セミマットな肌の質感。ちょこちょこと今にも歩き出しそうな小さな手足。
鳶色のくりっとした目は綺麗に光を反射し、恍惚とした紋の表情を映していた。

――――――――かーわーあいいいいっ!!!
うっかり目が眩みそうになる。ああ、貰っておいて良かった。
「百手君、本当に可愛い…そうだ、折角貰った他の洋服も着せてみようかしら!きっともっと可愛いわ!」
もう一度見たいと思っていたビューナス女学院のミニチュア制服を取り出して並べ、
うきうきと赤いパーカーを何も考えずに引っ張り……はた、と我に返った。

今自分が遊んでいるのは、同じクラスの男の子の形をした人形。
今自分がやろうとしていたのはつまり、その男の子の服を、上も下も全部、
――――――――……わ、私ってばっ、何考えてるのかしら!

さっきまで着せ替え人形のマスコットの様に扱っていたというのに、何だか妙な気分になってしまって
落ち着かない。…落ち着かないのだが、どうしても制服を着せたかったのと、唐突に湧いた別の好奇心で、
人形が身に付けていた衣服を全て剥ぎ取ってしまった。

無造作に手の中に収まった人形にはささやかながら…男子であることの証明まで付けられていた。
作りが異様に細かかったので、ぱっと見た時からもしかしたらと思ったのだが、その予想は見事に的中するl。
それは人間ならキューピーや小便小僧の亜種みたいなものだと思うくらいの、
到底性的な物とはかけ離れた印象を与える筈のデザインなのだけれども。

――――――――な、何なの…この無駄に凝ったディテールは!?
顔を真っ赤にし、真夜中にひとしきり騒いで、一瞬の逡巡の後。

「……………ごめんなさい。だって可愛いんだもの」
躊躇いがちに、細い右手の指を人形の「それ」に触れさせた。
そしてもう片方の手は、自分のパジャマのズボンの内側に。

――――――――はっ………んん、あ…………っう……………!
下着の上から指でぐっと押し、軽く挟む様にして前後に擦り上げると、じんじんとした疼きが身体を駆け巡る。
左手には一糸纏わぬ姿の人形。その脚の間をそろそろと往復する様に指で撫でると、
いけない事をしているという妙な背徳感が後押しして、紋の脚の間も一層濡れた。
「あ………何、やってるの、かしら……………ふっ」
いつしか、下着の上から擦っていた指を中に入れ、熱い吐息と連動する様に指で浅い所を掻き回していた。
最早何に興奮しているのか良く分からないが、一度火照ってしまった手前、中途半端に止めるのももどかしい。
愛らしい、小さな私の王子様。人形を布団の中に引き込んで、その頬を軽く舌でなぞる。
きゅっ、と片手で握りしめて、突き出したソレを薬指でをとんとんと叩いてみた。
「っ……………ん……………止まんな、い………………!」
頭から布団を被った真っ暗闇の中で、いたずらなお人形遊びは続く。


―その一方、猫耳アパートの一室にて。
背中があったかい。なんか、ぬるま湯に浸かった様な心地がする。
甘い匂いがほのかに鼻をくすぐって、とても心地が良いと思っていた刹那、
痺れる様な刺激が下肢に走った。ゆるゆると当たる、人肌の感触。
やっべえぇぇ!!なによこのきもちいいの!!何か女の子に膝とか腿とか当てられて焦らされてる感じ?
そんな経験無いけどきっとこれそんな感じだよな?

誰が自分にそうしているのかは全く分からない。視界も霞がかっていて
機能しないのだが、身体のあちこちに当たる柔らかい感触や花にも似た香りから、
美しい女性のイメージが直ぐさま形作られる。
―――――――イヤーンちょっとそんなに弾かないでー!!あっでもやめちゃ駄目ー!!
ぎゃーぎゃー言いながらも、彼は今正に幸せを感じていた。
只一つ惜しむらくは、自分の身体が全く動かない事だ。動けたのなら、速攻で胸に飛び込みたい所なのだが。
身体の自由がきかないまま、唐突にぬるりと左頬を這った謎の物体にびくりとする。
―――――――ちょっ、何コレ、触手プレイ?緊縛&触手プレイなの?うおおお大胆!!
誰だ、オレの女神、エロの女神様は!これはもう目と目で通じ合うしか!念じろ、オレ!!
テンションゲージは、最早MAX寸前だった。

…と、突然、興奮していくのと比例する様に、視界がクリアになっていく。
―――――――アレ?なんかちょっとさっきと雰囲気変わった様な?いい匂いもしないし、
背中があったかくもない。まあいっか、もう少しで女神と…!

ご対面まで、あと5秒、4秒、3秒、2秒、1秒――――――――――――――――――


「ぎいやあああああ!!悠!!悠!!助けてェーーー!」
「どうしました王子!!サボテンダーみたいな顔になってますよ!!」
「ねっ、猫ドラが!!猫ドラがオレのジュニアに…にゃんにゃんして!!じゃれ付いてッ…!!
…あああああああああああああああ!!」

「落ち着いて下さい王子。ちゃんと目が覚めましたか?安心して下さい、この部屋に
私が来た時には王子だけしか居ませんでした。召還もしていません。王子は夢を見ていたんですよ」


「…………あ……………………………ゆめ?」
「はい」

こくり。



「…………………っ、うわあああああああん!!怖かった、怖かったよ―――――!!」
一瞬の沈黙の後、安堵感から赤ん坊の様に泣き出した太臓、それをなだめる悠。
[マジメな委員長がこんな大胆な事を…]号室の夜は、こうして更けて行くのであった。


「つーわけでさ、昨日の夜は大変だったんだぜ?折角の淫夢も台無し!もーオレトラウマよ」
「至って元気そうじゃねーか」
「いや、だってよ!?最初とかホントリアルだったんだって!!マジに!!金メダル級に超気持ちいー」
「聞きたくねえよ!微妙な古さの流行語も聞きたくねえ!」

「ああっ………あのいー匂いの美女はどなた!?夢にまで出てくるなんて、
よっぽどオレの事が好きなんだな!さー恥ずかしがらずに出ておいで!!」
「王子、意外と身近な人物かも知れませんよ」
「プホー!マージマジマジーロ!?まーじで!?……温子かな?まわるかな?………や、やっぱ紋かな!?
やっべーやっぱり次世代のもて王はオレじゃね!?」
「おい悠…いい加減、少しは現実を見せてやれよ」

「何を言う、宏海。真実を言ったまでだ」
「いやお前こそ、何を言う」

昼休みの屋上、いつもと変わらぬハイテンションな声が響き渡る。
へにゃりとした笑顔で宏海に語るその姿からは、早朝の凹み具合など全く感じ取れない。
嫌な事は忘れる、都合の良い事だけを記憶する王子。やはり、早く止めに行き過ぎたか。

―――――しかし、紋は実に良い働きをした。珍しい実界人だと感心する。

念を込めて触れた人形を通して、実体に感覚が伝わる。

呪いと書いて「まじない」とも言う様に、占いやおまじないは、恋愛の定番アイテムだ。人間の思念は、何も怨みだけではない。
距離の遠さから”眼通”でも鮮明には見えなかったが、人形相手に相当な事をやってのけたようで。
王子も予想を超えて興奮していた様なので、面白く無――仕方無く、”千の目”でテンションを下げた。
腐ってもプラチナクラスの間界人、うっかりハイパーテンションモードでの誤召還でも起きれば、
流石に事態を収められるかどうか予測がつかない。

そう考えて相当な悪夢を割り込ませた筈なのだが、流石は王子だ。へこたれない。


「呪いの人形、矢射子かあいすあたりに渡したらどうなっただろうな」
「受け取る前に粉砕だと思うけどな。釘刺すまでもなく死ぬだろ」
「ふむ、それもそうか」
そう言ってフェンス越しに悠が見下ろしたのは、数人の女生徒に囲まれている紋の姿。


まあ、仕方無い。たまにはいいだろう。



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