学園祭の隙間 :2006/06/11(日) 12:32:12 ID:aZG8tEPK


学園祭の最中は誰もが気を張っていて、普段の日常とは異なる状況をそれぞれに楽しん
でいた。
だからこそ、意外と不届きな考えを起こす連中にとっては、その非日常性が程良いエアポ
ケットになってくれる。
わずかな時間、そこからいなくなったところで誰も気に留めることはない。不思議とそうな
っているようだ。

「こんな時にしたくなるなんて、大概いい心掛けだこと」
「何だ、うるさい奴め」
憎まれ口を利くあいすの薄い耳を、悠は強めに後ろから噛む。力の加減というものを心得
きっているのか、一番激しく性感を刺激する強さだ。
堪らない。
「あうっ」
「声を出したら、気付かれるぞ」
「…それなら、あんただって同じよ」
「黙れ」
悠は女生徒の姿をしていた。そんな格好で突然その気になられても困る。軽いエスケイプ
を持ちかけられた時にそう言ったのに、どうしてうかうかと言葉に乗ったのだろう。あいすは
意外と薄弱な自らの意思を呪った。
ナース服のボタンは全部外されている。男の手には難しい筈のブラのホックも難なく外さ
れた後はもう、背後から回された手で思う存分撫で回され放題をされている。
信じられない話だ。
周囲からは楽しそうな生徒たちの声が聞こえてくるというのに、二人で空き教室に篭ってこ
んなことをしているなんて。
「…いいから早く終わってよ」
投げやりに言葉を吐いたあいすの乳房がぐいっと掴まれた。


「いたっ」
「無駄口は聞くな、いいな」
あくまでも短時間で効率良く快感を搾り取るつもりなのか、今日の悠にはいつも以上に容
赦がない。
何の前触れもなく最初に脱がされたショーツが教室の隅に落ちている。
無防備になったそこに忍び入る指が、淫らに蠢いていた。奥に入るでもなく、ただ焦らすよ
うに感じる部分をいじるだけだ。そんな意地悪い遣り方が最も感じてしまうことも、きっと知
っているだろう。
あまりにも狡猾な手口に、さしものあいすも音を上げる寸前にまで簡単に追い詰められて
いた。学園祭の最中ということも多分に影響しているに違いない。決して声が漏れてはい
けない、誰かに見られでもしたらこれまでのことが全部水の泡だ。そんな気持ちも更にブロ
ックをかけている。
もはや、あいすに有利な状況など微塵も残されてはいなかった。
「あいす」
殊更ゆっくりと、囁くような声があいすの耳を残酷に引っ掻いた。
「まだ触っているだけなのに、もう濡れてるぞ」
「う、ぅ…だから何?」
「淫乱女」
波のない声が嘲笑のように耳元で弾けた。
「あ、あ…心外ね、そんな言い方」
「本当のことだろう」
声こそは静かな癖に、指だけは執拗に蠢いてそこからねっとりとした愛液を湧き上がら
せ、あいすを淫らに変貌させていく。どっちにしろ、一応のけりがつくまではここから出ら
れないのだ。
「くっ、あんたって…最低」
こんなところにいたい訳ではないのに、気持ちがいい。
悔し紛れに吐き捨てた言葉が空しくぽろぽろと床に零れていった。

「…ぅあっ、ダメ、もっとゆっくりして…」
床に這いつくばる体勢にされたあいすは、さして慣らされもしないそこに無理やり突き入
れられた灼熱の肉棒の勢いに、堪えきれずに苦しい悲鳴を上げた。
腰だけを高く上げさせられているだけでも屈辱なのに、何だか物足りないとの悠の酷薄
な一言によって、それまで無事だった後ろの穴には近くに転がっていたマジックのボディ
の先が突っ込まれている。
本当は痛い筈なのに、どうしてなのかそれもまた感じてしまっている。
「あひっ、動かさないで、おかしく、なるからっ…」
「うるさい、声が漏れてもいいのか」
「ぅ、ぅ…」
容赦なく腰を 使いながら、時々突き立てたマジックを動かして後ろも刺激してくるのが堪
らない。こんなことは何も知らなかったのに、どんどん予期しない方へと開発されていくの
を感じて恐怖に身震いをした。
このままでは、どうなってしまうか分からない。
なのに、そんな戦慄すら今は全て快感にすり替わってしまっている。
「あ、あんっ、いゃああんっ…」
極限まで極まっていることを表すように、結合部からは抜き差しされる度に熱い愛液がた
らたらと漏れ出ていた。わずかなプライドが残っているのか、形だけ逃れようとしているよ
うに床を引っ掻く爪の先が空しく上滑りしていく。
「あ、悠、私、わた、しっ…」
既に呂律も回らなくなっていた。叩き壊すほどに激しく腰を打ちつけられ、ほんのりと染ま
った乳房を揉まれて、あいすはもう正気ではなくなっていた。
「さあ、懇願してみろ。『お願いです』とな」
無理に顎を掴まれて、合わされた唇の間から傲慢な舌が入り込んできて乾きかけている
口腔内を存分に犯していく。
選択はひとつしかなかった。
「…お、お願いします…早く、早く良くしてっ…!」
激しく全身を震わせながら、出口のない灼熱を体に溜め込んだままであいすはやっとの
こと、というように言葉を返す。
「よし、いいだろう」
わずかに残った理性が、その言葉だけを知覚した。
そして、後は何も分からなくなる。


外の楽しそうな喧騒は相変わらず続いていた。
目覚めてからしばらくは、さすがにあいすもぼんやりしていた。こんな日に犯されるとは
思ってもいなかったし、経験していなかったことを強制もされた。
ただ、もうここにはいないと思っていた悠が、相変わらずつまらなそうに床に座って様子
を伺っていたことには少し驚いている。
「…さっさと出て行ったと思ったわ」
がんがん痛む頭を抱えながら、起き上がるあいすを少年は無表情に眺めるだけだ。
「戻ったところで王子のお守りだ。暇潰しならいいが、尻拭いは正直御免こうむる。なら
ばこうしていた方が少しはましだ」
情などかけて欲しいとは思わないが、やはり呆気ないほどに気のない言葉だ。まあ、そ
れが自分たちの関係には一番似合っていると、あいすは少しだけ心が明るくなった。
重荷になる心など少しもいらない。
「…さあ、戻るわよ」
乱れた髪を何とか撫でつけて元通りにすると、ここであったことなど全部忘れたような顔
で立ち上がった。まだ、今日はやらなければいけないことが山ほどある。
「私は行くけど」
「それでは俺も行こうか」
当たり前のように、悠も立ち上がった。
あれから、それほど時間は経っていないようだった。



終わり



<<作品倉庫に戻る




inserted by FC2 system