第28.2章(あく×さど) 2006/04/12(水) 21:20:43 ID:qH2A2iL8


ドーーーーーン!!

「うおぉい! 太臓と真白木さんが吹っ飛ばされたぞ! あと召喚された間界の奴も」
「む、まずいな…」
あいすの暴走した冷気は瞬間的に氷の爆風と化し、見舞いに来ていた太臓たちを家の外へと放り出す。
辛うじて回避した宏海の視界の片隅に、外に居て巻き添えを食ったらしい真白木の舎弟の一人が
もんどりうって一緒に吹き飛ばされていくのが見えた。
「……う、くぅ……はっ。はっ……」
あいすは凍った畳の上に蹲り、何とか自身の力を制御しようと苦しそうに呼吸を荒げながら
湧き出す冷気の奔流に抵抗し続けている。
だが、その間にも渦巻く冷風は勢いを増し、背中を覆う氷塊は少しずつ大きく成長し続けていた。
「宏海。すまないが、この場は任せた」
しゅたっ、と挨拶代わりに片手を挙げて、悠が部屋から出て行こうとする。
「はぁ!? 冗談だろ! この状況で俺に一体どうしろってんだ?」
「こっちは役職上、吹き飛ばされた王子の見物…もとい保護が最優先だ。その後で何か対策を考える。
どのみち寒さに弱い俺には何も出来ない」
それだけ言い残して悠はさっさと氷漬けの家から逃げ出してしまい、吹雪舞う部屋の中には苦悶する
あいすと宏海だけが取り残された。

「あ……はぁ……宏、海……」
呆然と事態に困惑していた宏海が、弱々しく自分を呼ぶ少女の声に我に返った。
「さ、佐渡! どうした!? 苦しいのか?」
あいすの傍に駆け寄った宏海を、けれど少女は冷たい視線でただ見上げる。
「なに、してるの……。あんたも、早く……逃げなさい、よ……」
「……あのな。ここで俺が逃げたって、何の解決にもなんねぇだろ?」
「居たって……くぅっ……邪魔、よ……。さっきも……言ったけど…………はぁ、はぁ……
これは、私個人の……問題……なんだか、ら…………」
倒れそうな身体を懸命に両手で支え、必死に声を絞り出す。
「どう考えても個人レベルの話じゃねえだろ。さっきも婆さんが凍ってたし、何より近所迷惑だ」
「そ、そうだったわ……おばあちゃ、ん……。お願い、おばあちゃんを連れて……早く、逃げて」
頑なに自分だけで始末をつけようとするあいすに手を貸しあぐねて、宏海が一つ溜め息をつく。
(婆さんには“力になってやってくれ”って言われてるしな。さて、どうするか……)

しばらく無言で見下ろしていた少年は、やおらその場に自分もひざまづき、少女に両腕を伸ばした。
「な、なに?……きゃっ!?」
小さなあいすの身体が、抵抗も出来ないまま宏海の胸に抱き寄せられる。
「おわっ! 結構重いな。背中の氷のせいか」
「な!?……は、放しなさいよ!……ろくに動けない女の子を……どうする気……こ、の卑怯者!」
身の危険を感じたあいすが、力の入らない拳で宏海の胸をポスポスと叩いた。
「無駄に体力使うなよ。取って食ったりしねぇ」
なるべく少女を密着させ、自分の身体で包み込もうと試みる。
「……悪ぃな。俺じゃあ他に暴走を抑える方法を思いつかねェ」
胸の中で暴れるあいすを見ないで、ぼそりと宏海が言った。
疲れたのか、それとも単純な力比べでは敵わないと悟ったのか。もがいていたあいすが大人しくなる。
「うぅ……あんた、馬鹿じゃない?…………人間の体温程度で…どうにかなると……思ってるの?」
「あ〜〜〜……多分、無理だな」
「多分じゃなくて……絶対無理。……このままだと…………凍死、するわよ……」
「かもな」
些細なやり取りの間にも指先が冷えて痺れてくる。吹き付ける冷気は、寒さを通り越して痛い程だ。
「……わ、分かってるなら……早く…………出て行……」
「暴れるなって。頼むから、さっきみたいに大人しくしてろ」
再び宏海を押し退けようとするあいすを、更に強く抱きしめる。
「何でも一人で背負い込み過ぎなんだよ、お前。……立場とか性格とか色々あんだろうが、もう少し
他人を頼ったっていいんじゃねぇか」
「………あんた達が………頼りにならないから…困ってるんじゃない…」
「まぁ、それもそうか。実際俺ら何しに来たのか分からんしな」
納得半分、自嘲半分に苦笑する。

「宏海………少し、苦しい……」「お、悪ぃ」
腕の力を緩めた。
「………………………馬鹿力…」
「すまん」
「………………………鈍感……」
「すまん」
「………………………………………迷惑掛けて、ごめん…」
「気にすんな」

学ランが白く凍てつき始め、吐く息は瞬時に氷の結晶へと変わる。冗談抜きで屋内遭難しそうだ。
(こりゃマジでやべぇな。じっとしてると意識がオチる…。何か話でもして寒さを紛らさねぇと──)
「そ、そういや一体全体どうしてこんなトンデモねぇ事態になってんだ? 間界領事のお前が…」
宏海の質問にしばらくの間黙っていたあいすだったが、やがて言いにくそうに口を開いた。
「少し………油断してたのよ。……アレの辛い日に、この冬一番の寒波が……重なって……
……ただでさえアレの時は……力が不安定に…………なるのに……」
「“アレ”ってのは…………やっぱりアレだよな」
「口に出して言ったら、殺すわよ………」
「そこまで無神経じゃねぇ」
気のせいか、あいすに纏わり付く氷塊の成長が止まったように見える。それでも部屋が吹雪いている
状況は変わらない。
「……って事は…その、あれだ。え〜〜、あ、アレが終わるまで暴走は止まらないって訳か」
「さすがに……それは無いと思うわ。……天気予報では……寒波は今夜には緩むらしいし……私も……
明日には、辛いの治まってる……気がする……」
「つまり、今日一日しのげば何とかなるんだな」
(長げぇ………………)
表情にこそ出さないものの、宏海は内心焦りを覚えていた。
この寒さの中で、ろくな装備も無しに普通の人間が一晩過ごせる筈も無い。悠が対策を講じるとは
言っていたものの、本人が寒さに弱いとあっては正直期待は出来ない。
(婆さんだけでも先に救出しといて正解だったな……)
床に突いた膝の感覚が無くなり始め、凍った空気を吸う度に喉と肺が痛みを訴える。
湧き上がる恐怖心を誤魔化すように、宏海はあいすの髪に指を通した。

「ん……」
無骨な掌が少女の後頭部に回され、髪の間に指が潜り込む。そのまま頭を男の胸に押し当てられて、
あいすはされるがままに目を閉じた。
力強い心臓の音。けれども同時に伝わる男の体温は、確実に吹雪に奪われ続けている。
(どうしよう………)
生理の痛みと倦怠感が精神の集中を妨げ、膨大な冷気の制御に必要な魔力を体内で生成できない。
けれど。
事態は深刻な筈なのに、不思議と気持ちは落ち着いている。

誰かが傍に居てくれる事がこんなに心強いなんて知らなかった。

今までずっと間界人であることを隠し続け、実界人との間に見えない壁をつくり続けていた少女は、
独りでいるのに慣れ過ぎてしまっていた。そんな彼女にとって、自分が雪人であることをを明かしても
実界人と分け隔てなく接してくれる阿久津宏海という少年は理解の範疇外であり、同時に理由も無く
自分を不機嫌にさせる存在だった。
その不機嫌の理由が、自分自身のつくり出した壁と、別の感情とのせめぎ合いにあることに、彼女は
まだ気付いてはいないのだけれど。

(あ、なんか少しだけ…楽になったかも…)
苦しそうだったあいすの呼吸が、わずかながら落ち着いてきた。身体の緊張を解いて自然に宏海の胸へ
凭れ掛かる。冷気の暴走も、何となく頭打ちになった感じだ。
(────!? 待って。いくらなんでもそんな筈は)

有り得ない変化に、ハッとあいすが目を開いて宏海を見上げた。
「宏海…………。あんた、本当に実界人よね」
「お、おう。何だ? 藪から棒に」
「…………魔力を感じる……」
澄んだ瞳が、少年の顔を覗き込む。

「ち、ちょっと待て! 魔力だぁ!? んなもん、まったく身に覚えが無ェぞ!」
慌てふためく宏海をよそに、あいすは俯いて考え込んだ。人差し指を唇に当て、この不可解な魔力の
理由を探り当てようと、ぼんやりする頭を懸命に働かせる。
「……そっか。きっと太臓が原因ね。あんなのでも間界の王子だもの。いつもアイツの傍に居た事で、
知らず知らず放出されていた強い魔力を浴び続けて、それが身体に蓄積されていったのかも……」
「マジかよ! 放射能よりタチ悪いな。……つーか、それって人体に害は無ぇのか?」
「………………………………」
「なぜ黙る?」
「ねぇ、宏海」
不安げな質問を無視して、あいすは再び少年を見上げた。
「それだけの魔力があれば、この冷気の暴走を止められると思う」

絶望的な状況に射し込んだ一筋の光明。宏海の表情が一気に明るくなる。
「おお!! 助かるんなら幾らでも俺の魔力とやらを使ってくれ。むしろ取り除いてくれ!
手助けが必要なら何だってしてやるぞ。んで、取り敢えずどうすりゃいいんだ?」
あいすは宏海の問い掛けに数瞬視線を泳がせ、それから意を決して耳元へ唇を寄せて囁いた。
「うぉ!? …えぇっ!?」
少女の言葉に宏海は戸惑い、聞き間違いではないかと疑って、もう一度聞き返す。
「……マジで?」
「なによ。何でもするって言っといて、今更イヤだっての?」
あいすが拗ねたような上目遣いで宏海を睨んだ。
「い、いや、俺は別に嫌って訳じゃ……むしろお前こそ…その…………いいのか?」
「仕方ないじゃない。非常事態だもの、私一人の犠牲で間界と実界の平穏が保たれるなら……。
“魔物の生贄に捧げられるお姫様”って、きっとこんな心境なのね」
「おれは魔物と同レベルかい! つーか、この期に及んでそんなに人の罪悪感煽りたいんか!?
ったく、奮い起こしたヤル気も失せるわ」
「……やっぱり私とするの嫌なんだ。そうよね。赤い悪魔なんて言われてても、こんな冷たい雪女より
生徒会長みたいにいろんな所が柔らかくて暖かそうな実界の女の方がいいわよね」
「だから罪悪感煽るなってーの。…もういい、このままじゃキリが無ェからとにかく始めっぞ」
言い合ううちにお互い普段のテンションを取り戻し、空気が幾分軽くなったところで不意に宏海が
真顔になった。
「その前に一つだけ。あ〜〜……その……アレだ。非常事態とかそんな理由は置いといて、俺は
好きでもない女にこーゆー事をする気は無い。たとえ命に関わろうと、嫌いな女を抱いたりしない。
まぁ、その……一応、そんだけ言っとくわ」

緊張気味な少年の言葉に、あいすはキョトンと目を丸くして黙り込んだ。
それからようやく意味を理解して、肩を震わせながら下を向く。
「ぷっ……くすくすくす……なにそれ……全然似合わない台詞……くすくす…」
「わ、笑うなって! 俺そんなにおかしなこと言ったか?」
「くすくす……ええ、最高。こんなに笑ったの久しぶりだわ」
顔を上げた少女の目元に涙が光っていた。白い指先でそっと拭う。
「畜生、言うんじゃなかった。ええい、あれこれ考えるのはもう止めだ!!」
宏海が気合を入れ直し、パジャマのボタンに手を掛けた。
「あ、待って宏海」「な、なんだ?」
出鼻をくじかれて戸惑う宏海を、眉根を寄せながら少女が見上げる。
「もう。ちょっとくらいムード出しなさいよ。……最初はキスから……」
「…………へいへい」
かじかむ指先であいすの顎を軽く上向かせ、顔を寄せる。
ガサガサの唇に触れた柔らかな感触。二度、三度と繰り返し触れてみる。特に反応も無いので、
思い切って舌を伸ばしてみた。
「んっ……」
一瞬だけあいすの唇が固く引き結ばれたが、もう一度舌で触れると微かに開いて宏海を迎え入れる。
冷気を操る力を持つ彼女の口内は、意外にも温かだった。普通の女の子と変わりない唇を舐め、
舌を探る。
「んぷ…………ふ、う……」
応えるようにおずおずと差し出された少女の舌が触れた。柔らかなそれを自分の舌先でなぞると
驚いたのか少し引っ込んで、また差し出される。
「……ふ、ん……んふぅ…………」
くすぐるように輪郭をなぞると同じ動きで返してきた。宏海がリードし、あいすがぎこちなく真似る。

ちゅっ……くちゅ……ぴちゃ……

濡れた音と共に恋人同士の戯れにも似た遣り取りを繰り返す。ほのかに甘く感じる弾力を存分に
味わって、宏海はそっと唇を離すと息を継いだ。
「ふあぁ…………やだ……宏海、慣れてる………?」
どこか夢見心地の声であいすが囁いた。極寒の中で微かに頬が上気している。
「いや、あんまりその辺は追及してくれるな」
「別に責める気は無いけど…………なんか悔しい」
宏海の襟首を掴んで、今度はあいすから唇を押し付けた。遠慮がちに宏海の口に舌を挿し入れ、出迎えた
相手の舌に絡み付かせる。お互い言葉も無く、ただ口内の温かさを共有し合う。
「………っぷはぁ! 意外と情熱的だな、お前。そんなに気に入ったか?」
「ん、そうかも。……宏海のキス、気持ちいい……」
少年の口の端に垂れる唾液をチロリと舐め取り、あいすがまたキスをせがむ。
口付けを交わしながら、宏海の手がパジャマのボタンに伸びた。手探りで上から三つ目まで外し、
はだけた胸元に掌を滑り込ませる。
「んっ!?」
ビクン、とあいすが身を竦ませた。
「わ、悪い! 冷たかったか?」
「…ううん。冷たいのは平気、だけど…。いま、胸…あんまり強く触られると、痛いから…」
「そ、そうか…。女は色々と大変だな……」
力を入れないよう、慎重に膨らみを包み込んだ。ブラは付けてないらしく、なめらかな肌の温もりが
凍りかけた指先にじんわり沁みる。ゆっくり、撫でるように胸の形を掌で確かめる。
「ん…………」
少女は宏海の愛撫に身を任せきって目を閉じた。時折、手の動きに合わせ小さな吐息を漏らす。
(これはこれで悪くないんだが……こっからどうすっかな……)
宏海は背中に巨大な氷塊を背負ったあいすの身体を片手で支え、もう片手で胸を弄りながら思案する。
こんな自由の利かない体勢でソフトタッチの愛撫を続けていても、寒さに体力を消耗するばかりで
先へ進まない。指先に当たる小さく尖った乳首の感触に愚息がいきり立つのを自覚しながら、
(なによりこっちが辛抱たまらんわあぁっ!!!)
久しぶりに触れる女性の肌に、軽く理性が飛んだ。

「えっ!? ちょ、ちょっと宏海? ひゃん!」
抱き上げられ、あいすの視界がぐるりと回転した。殆ど衝撃を感じないで凍った畳に横たえられる。
「スマン。俺、何気に限界」「や、バカぁ! 何する気よぉ!?」
抵抗する暇も無く武骨な手がパジャマのズボンに掛かり、パンツと一緒に引っ張り下ろされた。
軽々と持ち上げられた腰をするりと布地が滑り、足首から逃げていく。
「やだっ! 見るな、バカ! 変態!!」
背中の氷が重くて起き上がれない少女は、両手で大事な部分を隠しながらぴったりと膝を閉じ、何とか
男の視線から逃れようと身を丸くする。が、そんな恥じらいの仕草すら今の宏海にとっては興奮を
かき立てる蠱惑的なポーズにしか見えなかった。幼さの残る小さな腰のラインからスラリと伸びた白い
脚の眩しさに、思わず息を呑む。

「そんなに膝曲げてるとケツ丸見えだけどな…」
剥き出しの下半身に目を奪われながら、宏海があいすの膝頭に掌を乗せた。そのまま力任せに左右に
脚を割り開こうとする。凄みを増した真剣な目付きに、あいすが怯えた。
「やめてよ、何する気!? この、あっち行け!」
蹴飛ばしてやろうと振り回した足は簡単に掴まれ、逆に両脚を大きく開かれてしまう。その脚の間に
素早く潜り込んできた宏海の頭を手で押し退けようと力を込めるが、びくともしない。
「ひんっ!?」
少女が短く悲鳴を上げ、喉を反らす。股間を這う、ぬるりとした感触。
「駄目っ! そんなトコ、舐めちゃ駄目ぇっ!! 私、お風呂入ってないから…」
「余計なコト考えんな。俺は別に気にしないから」
「そーゆー問題じゃないの!」
あいすの抵抗を意に介さず、宏海は小さな割れ目に繰り返し舌を這わせた。白い肉の丘と、その間から
少し覗いた薄桃色の襞をまとめてベロリと舐め上げる。
「ひっく……馬鹿ぁ…………。駄目だって……言ってるのにぃ……」
とうとう両腕で顔を隠してあいすが泣きじゃくり始めた。

「今のうちに濡らしてほぐしとかねぇと、後で辛いのはお前の方だぞ」
内腿の温もりが頬に心地いい。なるべく舌全体を使って満遍なく唾液を塗り広げ、大口を開けて
少女の股間にむしゃぶりついた。
「っ!? んあっ! あっ! あっ!」
軽く吸い上げられ、ねぶられる。舌の動きに合わせて、あいすが小刻みな喘ぎ声を上げていく。
伸ばしたつま先が、ぴん、と氷の上に脚を突っ張った。

「……っぷぁ。はぁ、はぁ……佐渡……」
宏海の舌は襞の合わせ目を何度も往復し、唾液を染み込ませる。それからゆっくりと襞を掻き分け、
奥へ潜り込んでいった。尖らせた舌先を熱い粘膜の中に出し入れさせ、かき混ぜる。
「んっ! ひっ!? ヤぁっ!!」
太腿をがっちり掴んで跳ねる腰を押さえ込み、夢中になって啜る。寒さに弱っていた筈の肉体が俄かに
活性化し、ケンカの直前にも似たアドレナリンの昂ぶりと同時に内燃機関がフル回転を始めて身体の
内側から新しい熱を帯びていく。
あいすから顔を離すと、口に収められていた部分からほのかに湯気が立ち上った。嬲られて充血した
花弁がほんの少し大きさを増し、ぽってりと膨らんでいる。指でそっと開くと赤みを帯びた粘膜が
ぬめ光り、小さな入り口が収縮した。
「やべぇ…………」
ごくり、と宏海が喉を鳴らす。今すぐ自分のモノを突っ込んでメチャクチャにしてやりたい衝動を
ぐっとこらえ、唾液で湿らせた指を挿し入れた。同時に、包皮に隠れた敏感な芽を唇で啄ばんでやる。
「ひゃぁああんっ!!」
一際高い声とともにあいすの身体が弓なりに反った。
「駄目っ! それダメェ!! んあっ!! あああああああぁぁっ!!」
構わず突起を舌で転がし、指を捻じ込む。冷えた指を温かく包んで締め付けるあいすの胎内。
肉芽を舐めながら垂れる唾液を指先で掬い取っては、狭い穴の奥の方まで塗りこんで濡らしていく。
(この指だけシモヤケになりそ……)
細やかな奥の凹凸を名残惜しく感じながら指を引き抜き、宏海は身を起こした。
「佐渡。…そろそろ、いいか……?」
まだ顔を隠したままのあいすに問い掛ける。
「ぐす。……知らない! さっさと終わらせてよ。恥ずかしくて死んじゃいそう……」

ベルトを外し、ズボンとトランクスを膝までずらす。
「うおお! やっぱ寒い! 金玉縮み上がる!!」
寒さに吼えながら、それでも股間のモノはギンギンにいきり立っていた。腰を寄せ、あいすの花弁に
軽く先端を押し当てる。それだけでも気持ち良くて跳ねる肉茎を押さえ、丸い亀頭の先で入り口を
上下に擦りながら粘液をまぶしていく。
「……いくぞ。痛かったら、言えよ」
脈の浮き出た剛直を少しだけ押し込んだ。
「んっ…………」
侵入してきた圧迫感に、あいすが唇を噛む。
「くっ……うぉ……。予想はしてたけど……やっぱ……キツイ、な……」
先っぽが熱いぬめりの中に飲み込まれ、気持ち良さに宏海の背筋が震えた。小刻みに抜き差しを
繰り返しながら、少しずつ深く屹立を埋めていく。

「佐渡」
半分ほどをあいすの中に埋めたところで少女の身体に覆い被さり、名前を呼んだ。
「……………………」
あいすは両腕で顔を覆ったまま黙りこくっている。
「佐渡。こっち向けって」
もう一度名前を呼んで、手首を掴んだ。
「やっ! 顔見ないでよ! バカ!!」
無理矢理腕を引き剥がされ、あいすは宏海の視線から逃れるように顔を背けて固く目を閉じる。
はだけた胸元から首筋、そして先の尖った耳までが桜色に染まっていた。雪の白に映える羞恥の色に
魅入られて、宏海はあいすの耳に舌を這わせる。
「きゃあ!? こ、この、どこを舐め……んむっ!?」
怒鳴ってやろうと顔を向けたあいすだったが、それより先に唇を塞がれた。
「んーーーーっ! んんーーーーーーっ!!」
抗議の唸り声を聞き流し、宏海は無遠慮にあいすの舌を吸い上げ、唾液を送り込む。たっぷりと時間を
かけて吸い続けるうちに、あいすが抵抗を止めた。それでもしばらく吸い上げ、ようやく口を離す。

「ふはぁ…………はぁ…………はぁ……」
長い責めから解放されたあいすは、軽い酸欠状態に朦朧としながら息を継ぐ。その間にも、宏海は
彼女の頬や首筋のあちこちに唇を落とし、すべすべとした肌の柔らかさを楽しみ続けていた。
「……佐渡」「ん……宏海……」
呼び掛けに今度は素直に応じて、あいすは宏海と口付ける。同時に宏海は少女の中に埋めていた自身の
屹立を、ゆっくり前後させ始めた。キスとは別の水音が、身体を通して二人に伝わる。
押さえ付けていた手を放すと、あいすの両腕が宏海の首に回された。宏海は冷たさも意に介さず氷の
上に両手をついて身体を支え、更に深くあいすの中へ挿入していく。
「んっ。んぷっ。ふぁ…こお……みぃ……んむぅ」
少年の突き上げに身体を揺すられながら、あいすは自分から唇を求める。縋り付くあいすに応えながら
宏海は少女の膣の気持ち良さに没頭して腰を捻り、掻き回す。
まだ男のモノを受け入れ慣れていないあいすの中。侵入を拒むかのようにギュッと締め付ける一方で、
腰を引けば離すまいと吸い付いてくる。最初のうちは引き攣れて動かしにくかったが、次第に奥から
溢れてきた蜜でぬるぬると潤い、細やかな襞々が宏海のペニスを擦り立てる。

「んぁっ。こ、宏海。もっと、優しくして……。奥の方、当たると痛い……」
内壁を無理矢理引き伸ばされる苦しさに、か細い声であいすが呻いた。
「わりぃ。もう少しだけ辛抱してくれ。俺、そろそろ……」
あいすの中を圧迫している凶暴な肉茎が、ぐぐっ、と一際大きく膨れ上がる。宏海は本能的に最奥まで
怒張を突き入れ、膣の行き止まりで一気に爆発した。
「ぐぅっ! さ、佐渡!!」
「!? やっ! 何!? んあああああぁぁーーーーーっ!!!!」
宏海の迸りと同時に解き放たれたエネルギーが、内側からあいすの身体へ広がっていく。
「あっ! やぁっ! 宏海っ!! 宏海ぃっ!!」
凄まじい魔力の奔流に吹き飛ばされそうな気がして、あいすは腕と脚で宏海にしがみ付き、必死に
名前を呼んだ。

ピキ、ピシピシピシ──

少年のペニスが跳ねる度に見えざる力の波動を受けて胎内が疼く。血よりも勢い良く駆け巡る魔力は
急速に身体の隅々に行き渡り、周囲の空間を“在るべき姿”へと修正していく。背中に張り付く氷が
細かく音を立ててひび割れ始めた。

パキィィィィン!


 * * *

氷が砕け散り、吹雪が止んだ。
騒がしい風のうねりが消えて部屋に静けさが満ちる。
「……………………とりあえず……助かった、のか?」
背中にうっすらと雪を積もらせた宏海が顔を上げ、安堵の溜息をついた。
「これで一安心か。よく頑張ったな佐渡。…………おい、佐渡!?」
気が付けば、あいすは宏海の腕の中で“くてん”と意識を失っていた。軽く頬を叩いても反応しない。
「ま、まぁ呼吸もしっかりしてるし…大丈夫だよな、多分」
少々やりすぎたかと反省しながら、あいすの中から強張りを引き抜いた。
(そういや生で中出ししちまったが…………いいのか?)
多少の不安を覚えつつ、そそくさと後始末を済ませてあいすのパンツとパジャマを拾い上げた。半分
凍っていたが、裸よりマシだと軽く氷を叩き落として未だ気を失ったままのあいすに履かせてやる。
無防備な裸身に誘惑されそうになりながら四苦八苦して元通りにパジャマを着せ、額の汗を拭った。
「しっかし、暴走が治まっただけで随分と寒さが和らぐもんだな。むしろこう、ポカポカと………
って、んなワケねぇだろ!! 何だ、この陽気は!?」
不審な熱放射を感じて、慌てて宏海が振り向いた。そこには────

「キャーーーーっ!! キャーーーーっ!!」
部屋の入り口で巌のような巨体を丸め、両手で顔を隠して乙女全開な悲鳴を上げている推定少女。
間界人と実界人のハーフで、大企業の令嬢でもある大木杉音が居た。偶然覗いた睦事に赤面するあまり
巨大なダルマストーブと化して、周りの氷をみるみる溶かしていく。その杉音の隣では、
「うむ、近年まれに見るお宝映像だった」
悠が満足げにデジカメを懐に収めていた。
「いつからソコに居たーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
こちらも真っ赤になりながら宏海が怒鳴る。
「何を憤ってる? 対策を講じるから待ってろと言っておいたろう」
憎らしいくらいのポーカーフェイスで悠が言い返してきた。
「いや、まぁ、その通りだけどよ…」
「で、でも取り返しの付かない大事になる前に自力で解決したんだから、お手柄ですよ阿久津君」
バツの悪そうな宏海に杉音が助け舟を出した。
「後の処理は大木グループに任せてくださいな。あいすさんには領事として普段お世話になってるし、
こんな時こそお役に立たなきゃ」
「あ〜〜……そんじゃ今日のところはお言葉に甘えます。…………いろんな意味で心苦しいが」
宏海が杉音に頭を下げた。
弟の玲夜が太臓たちのイジメに遭って裸に剥かれたことを、彼女は知っているのだろうか。

「それにしてもあいすに手を出すとは……。王子のハーレム計画に真っ向から挑むその命知らずな姿勢、
本気で見上げたものだぞ宏海」
「お前こそ、佐渡の盗撮エロビデオなんて命知らずもいいとこだろ。バレたらマジで殺されるぞ」
「? なんの話だ? このカメラには宏海の尻しか写っていないが」
「やっぱりそーゆーオチかよ、チクショーーー!!!!」
あわよくばダビングを頼もうと思った宏海の野望はあっさり潰えた。
「あ。そういや、太臓の奴はどうした?」
「それなんだが、公園で小便小僧と熱い抱擁を交わしていたんでな。気を利かせてそっとしておいた」
「ハタメーワクだ!! 回収しろ!」
怒鳴り声にも眼を覚ますことなく、あいすは宏海の腕に抱えられて穏やかな寝息を立てていた。


(おわり)




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